●日銀は今月末に国債買い入れの減額計画を公表する予定だが、現時点でその詳細はまだ不明。
●日銀は6月末時点で588.5兆円の国債を保有し、毎月6兆円程度の国債の買い入れを継続中。
●2年後に月4兆円なら残高は5%減、月2兆円なら9%減、市場に配慮した計画なら混乱回避へ。
日銀は今月末に国債買い入れの減額計画を公表する予定だが、現時点でその詳細はまだ不明
日銀は7月9日と10日に債券市場参加者会合を開催し、国債買い入れの運営に関し市場参加者の意見を聴取した上で、7月30日、31日の金融政策決定会合において国債買い入れの具体的な減額計画を発表する予定です。日銀の植田和男総裁は前回6月会合後の記者会見で、買い入れの減額は、「予見可能な形」で「相応の規模」を「(計画決定後)すみやかに行う」と述べていました。
ただ、減額計画について、現時点では期間が「今後1~2年程度」とされているだけで、減額の幅やペース、枠組みなどの手掛かりはまだ示されていません。そのため、国債買い入れの減額が開始された後、日銀が保有する国債の残高が、どの程度減少していくのかを正確に予想することは困難です。そこで、以下、買い入れ減額の枠組みを仮定し、国債残高の減少ペースを試算してみます。
日銀は6月末時点で588.5兆円の国債を保有し、毎月6兆円程度の国債の買い入れを継続中
まず、日銀が保有する国債の残高を確認すると、2024年6月末時点で588.5兆円と、日本の2023年度の名目GDP(597.3兆円)に近い規模に達しています。次に、国債の月間買い入れ額をみると、年明け以降、月6兆円程度の買い入れが続いている状況です。以上を踏まえ、国債の月間買い入れ額の変化を複数パターン用意し、それぞれについて、国債残高の変化をみていきます。
国債残高は2024年6月末時点の588.5兆円を基準とし、2024年7月は6兆円の買い入れ実施を仮定します。2024年8月から2026年7月までの2年間、月6兆円の買い入れ額について、①月6兆円を維持、②2兆円分を毎月均等に減らし、2年後に月4兆円とする、③4兆円分を毎月均等に減らし、2年後に月2兆円とする、④6兆円全額を毎月均等に減らし、2年後に買い入れゼロとする、という4つのパターンを想定します。
2年後に月4兆円なら残高は5%減、月2兆円なら9%減、市場に配慮した計画なら混乱回避へ
結果は図表1の通りで、2024年8月から2026年7月までの2年間で、日銀の国債保有残高は、①はほとんど変わらず、②は28.5兆円(4.8%)減、③は53.4兆円(8.9%)減、④は78.3兆円(13.1%)減、となります。参考までに、2024年8月から月6兆円の買い入れを完全に停止した場合は図表2の通りで、2026年7月までの2年間で、日銀の国債保有残高は、141.6兆円(24.2%)減少することになります。
日銀が必ずしもこの枠組みを採用するとは限りませんが、将来の国債償還額が分かっているため、買い入れの減額は「予見可能な形」で「すみやかに行う」ことができます。「相応の規模」は、市場参加者の意見を踏まえ、日銀が判断することになりますが、植田総裁は先月、「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保」すると述べており、日銀の減額計画発表で、市場が動揺する恐れは小さいとみています。
(2024年7月9日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日銀の「国債買い入れ減額」と「保有残高の減少」を試算する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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