事業売却後に買主から〈損害賠償〉を請求されるケースも!…好条件での事業承継の実現を阻む〈あまりに巧妙なトラップ〉【M&Aのプロが助言】

事業売却後に買主から〈損害賠償〉を請求されるケースも!…好条件での事業承継の実現を阻む〈あまりに巧妙なトラップ〉【M&Aのプロが助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

顧客の利益を優先して交渉支援をするはずの「M&A仲介サービス」。しかし、仲介会社や買い手からの提案に応じて事業売却を進めることが、売り手にとって「思わぬ失敗」につながる要因となっている実情があります。オーナーズ株式会社代表取締役社長の作田隆吉氏が、そのリスク要因について詳しく解説します。

「最適な譲渡手法」が選択できないリスク

中小企業のM&Aにおいて、最も一般的な事業の譲渡手法は「株式譲渡」です。シンプルで迅速に実行できることが、当事者にとって、メリットといえます。営業ノルマを抱える仲介会社にとっても、株式譲渡はスピーディに成約を実現することができて使い勝手がよい手法です。

 

しかし、場合によっては譲渡手法を工夫することで、売り手が受領する対価の手残りが増加する効果が期待できることがあります。具体的には、会社分割を活用するケースや配当金、退職金を組み合わせた対価設計をすることなどが挙げられます。

 

ここでも忘れてはいけないのは、M&A仲介サービスは、中立の立場で売り手と買い手をマッチングするサービスだということです。買い手も顧客として支援する構造ゆえに、売り手のメリットを考えた助言や交渉支援はできません。ですから、仲介会社が売り手にとって最もメリットの大きい譲渡ストラクチャーを提案し、実行を支援してくれることは期待できません。こうした支援を求める場合には、譲渡手法に関する会社法や税法も熟知しているFAを起用する必要があるでしょう。

 

ここでも当社の直近の支援案件から具体例を紹介します。

譲渡対象から除外したい事業が存在するC社のケース

C社オーナーは後継者が不在であることを背景に、M&Aによる第三者への事業譲渡を検討していました。そんなときに、M&A仲介会社から具体的な買い手を紹介されます。

 

双方前向きに検討を進めていたものの、C社には、オーナーが譲渡対象から除外したい不動産や別事業が存在していました。そこで、C社オーナーは、譲渡を希望する事業だけを譲渡する方法がないか、と仲介会社に相談しました。ところが、その仲介会社の回答は、「資産をわけることはできない」「時間がかかるのであれば、買い手が降りると言っている」と、否定的なものでした。

 

そうした回答を受けて不審に思ったオーナーが、当社にセカンドオピニオンを求めて相談に来ました。当社としては、本件において、希望する事業だけを譲渡することを制限する事情はないと判断し、会社分割による譲渡スキームを提案しました。

 

本件はその後、当社の支援のもと、売却活動を仕切り直す運びとなりました。結果として当社が紹介する買い手への事業売却を進めることとなりましたが、譲渡ストラクチャーとしては、会社分割により譲渡対象外の資産および事業を分割し、分割した新会社は、資産管理会社として、今後の相続対策などに活用する運びとなりました。譲渡対象資産が減少した結果、C社オーナーに対する株式譲渡益課税も軽減されました。

 

譲渡スキームは、M&A支援会社と利益相反が生じやすいところです。M&A支援会社としては、分割を行わずにまとめて売却することで、仲介手数料を最大化することができます。また、会社分割に要する会社法上の手続きにかかる手間と時間を回避したい思惑も生じます。

 

依頼するM&A業者が、売り手企業オーナーのメリットを考えた譲渡手法をしっかり検討してくれているかどうかは、そのM&A支援会社が信頼できる業者であるかを評価するうえで、一つの重要な判断材料となるでしょう。

 

 

作田 隆吉
オーナーズ株式会社
代表取締役社長

 

 

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