ここ最近、大きな話題を呼んでいる「退職代行サービス」。さまざまな事情で退職をいいだせない人の味方となり、利用者数も急増しています。しかし、後に後悔したというケースもあるようで……。本記事では、Sさんの事例とともに退職代行サービスの落とし穴について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
退職代行サービスなんか使わなければ…GW明けに広告代理店を辞めた社会人1年目女性の「衝撃の現在」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

こんなはずじゃなかった…

退職代行サービスとは、本人に代わり、会社側に退職の意思を伝える代行をするサービスのことです。Sさんのように会社にいいだせない、精神的に伝えられられない人の代わりを担ってくれます。Sさんは疲労とストレスで咄嗟に退職代行サービスにすがりました。退職はできたものの、このあとSさんは後悔することに……。

 

新入社員にとって3万円は高い出費となった代行サービスでしたが、お金には代えられない状況であれば、納得できるかもしれません。しかしながら、Sさんのようにもともと責任感が強く、真面目な性格の人が安易に頼ってしまうと、自責の念に駆られてしまいます。Sさんも例外ではありませんでした。

 

会社に在籍している同期入社で仲良くなり励ましあっていた人から、あんなに急に辞めるなんてと、非難されます。担当部署では挨拶もなく突然の退職で怒っている人も多いとのこと。朝礼では、「退職代行を利用して辞めるなんて非常識。このようなことが二度とないように」と釘を刺されたそうです。

 

「自分のせいでみんなに迷惑をかけてしまった。退職代行サービスなんか使わなければなんて使わなければよかった。こんなはずじゃなかったのに……」

 

Sさんは社会人1年目にして、自分でけじめを付けなかったという罪悪感から、次の職業を探すことができなくなってしまいます。同じデザインの仕事に就きたいと思っても、どこかで前の職場の人に会うのではと、自宅に引きこもってしまいます。

選択肢は多いほうがいいが…一時の感情であとから後悔することのない決断を

社会人としての心構えとして、経済的自立、社会的責任等、十分に理解していたはずのSさん。会社の先輩や上司に相談することなく、先走って判断を誤ってしまったと、逆に自分を追い込んでしまう結果となり、現在は悶々と自室に引きこもっている毎日を送っています。

 

夢と希望に満ちた社会人生活が、わずか1ヵ月で衝撃の結末を迎えたSさん。苦い経験となりましたが、いまは心穏やかに過ごしながら気持ち新たに、行政(公共職業安定所)等に相談しながら、再度、目標をもって社会人生活をしてほしいと願うばかりです。

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表