総務省統計局の「家計調査(2022年)」によると、二人以上の世帯における貯蓄現在高の中央値は1,168万円。貯蓄が4,000万円以上の世帯が12.5%を占めており、その層のなかには億を超える資産を持つ人々が一定数存在することが推測されます。一般的に「富裕層」とは純資産1億円以上を保有する層を指しますが、彼らすべてが派手な生活を送っているわけではありません。本記事では、Aさんの事例とともに、「静かな富裕層」のリアルな実態を社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
気づけば資産は「3億円」になってました…35歳高卒男性、それでも家賃6万円の“事故物件”に住み、平日ランチは1食149円の冷凍パスタ。月収20万円の非正規雇用で「倹約生活」を続けるワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

都内在住・月収20万円、35歳男性のランチと住まい

都内で働く非正規雇用のAさん(35歳)は、月収約20万円で生計を立てています。新型コロナウイルス感染拡大により職を失ったあと、やっと手にした現在の職場。物価高が著しく進む都心での生活は、傍目には厳しそうにみえますが、Aさんの表情にはどこか余裕が漂っています。

 

彼の朝のルーティンは、職場でもお馴染みの光景となっています。出社して自席に着く前に、鞄から取り出したのは業務スーパーの特売で買った1食149円の冷凍パスタ。それを職場の共用冷凍庫へ。昼休みになると、食堂の電子レンジで温めて食べるのが彼の日常です。

 

住まい選びも独特です。彼が住んでいるのは、よく使う駅が定期圏内に入り、職場からのアクセスがよく、なおかつ最寄駅から徒歩5分という立地にあるマンション。周辺相場なら12万円は下らない物件ですが、彼はここを「家賃6万円」という破格の条件で借りています。その理由は、いわゆる事故物件だからです。Aさんは「自分はまったく気になりませんし、なにより安いですから」と穏やかに微笑みます。

 

同じような賃金水準で働く同僚たちは、そんなAさんの姿に「自分たちと同じように、工夫して生活をやりくりしている仲間」として親しみを持っているようです。安月給であることを絵に描いたような暮らし。等身大の暮らしを貫くAさんは、職場にすっかり馴染んでいました。しかし、彼がその裏である真実を隠しているとは、誰も想像していません。

20代後半で5,000万円…高校時代から磨いた「投資家の目」

実はAさん、総資産額は3億円です。その道のりは、高校時代の純粋な好奇心から始まりました。ほかの子とおなじようには音楽や運動に興味を示さず、趣味もないなかで、なんとなく日々を過ごしていたころ。初めて興味を持ったのが投資でした。未成年のうちは図書館で本を読み漁り、パソコンで株価の動きをみながら、アルバイトをして給与はひたすら貯金に回していました。

 

家庭の経済事情により大学には通えなかったため、高校卒業後は、コロナ禍で解雇されるまでのあいだ、製造会社で働いていました。そして、成人して証券口座を開設すると、いままで貯めたお金を使って投資を始めたのです。高校卒業してから解雇されるまで、給与の半分は貯金に回していました。手元に2ヵ月分の現金を通帳にいれ、貯金はすべて分散投資に。仕事を地道に続けながら、帰宅後はパソコンと向き合う生活を続けたところ、20代の後半には資産が5,000万円になっていました。もともと派手な生活を望まない嗜好ですが、資産が増えても超質素な暮らし方を変えることはありません。

 

さらに、投資の勉強を深めるなかで「これは伸びるかもしれない、面白い」と、5年前から資産の毎月50万円をコツコツと暗号資産(仮想通貨)に投じるように。その結果、資産は爆発的に膨れ上がりました。5年で約2億円となり、そのほかの投資資産を合わせると、現在の総資産は3億円にまで膨れ上がったのです。

 

暗号資産とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値です。24時間取引でき、短期間で利益を得られる可能性があるといったメリットがあります。ただし、さまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要です。

 

30歳で解雇という憂き目に遭いながらも、Aさんの軸は揺らぎませんでした。収入が非正規雇用の月20万円になっても、培ってきた「投資の筋肉」が彼を支え続けていたのです。