定職に就き、十分な貯蓄もある。しかし、それは本当の「自立」といえるのでしょうか。親の年金に頼り、家事の一切を親に任せる“半人前”の大人たちが、いま、日本で増えています。本記事では社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が、Aさんの事例とともに経済的な自立と、生活者としての自立のギャップについて解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
いつまでも居ていいからね…年金20万円・過保護な母と実家暮らし45年。〈貯金5,000万円〉の通帳を握りしめ、笑みを浮かべる月収29万円・次女が「人生初の一人暮らし」を始めた理由【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

母に甘えてなにもしない妹

47歳、共働きで2児の母であるAさんには、長年の悩みがありました。それは、45歳になる妹が、一度も実家を出ることなく、母と2人で暮らし続けていることです。

 

妹は29歳のときに婚約が破談したことがトラウマとなり、生涯独身と決め込んでいる様子。Aさんの目には、そんな妹を母が「いつまでも居ていいからね」と甘やかしているように映ります。

 

貯金5,000万円、45歳妹の“悠々自適”な実家暮らし

父は早くに亡くなっていたため、母の年金は老齢年金と遺族年金を合わせて約250万円(月20万円ほど)あります。住宅ローンがなく、贅沢しなければ2人で暮らしていくには十分な金額でしょう。

 

実家にいても、家事を手伝うなり、お金を入れるなりしているならまだしも……。妹は月収約29万円の仕事に就いていますが、家事を母に任せきりにして、お金を渡すこともありません。上げ膳据え膳で、平日のお昼まで母の手作り弁当を持参しています。それどころか生活費は、母の年金に頼り、自身の給与はほとんど貯蓄。その額は5,000万円に達し、通帳を眺めてはニヤニヤと笑みを浮かべているのです。

 

Aさん自身は学生を卒業してから就職し、29歳で結婚。現在は、夫婦で働きながら2人の子どもを育て、東京近郊に購入した一戸建ての住宅ローンを抱えています。もうすぐ大学受験を控える息子の教育費に頭を悩ませる毎日。ペアローンの返済に追われ、子どもを育てる立場からすれば、金銭的に余裕のある妹が羨ましいと思ってしまいます。反面、自立しない妹の将来を案じていました。