今回は、「インド企業」との交渉術を見ていきます。※本連載は、世界4カ国で20年もの経営経験をもつ平沢健一氏の著書『アジアビジネス成功への道』(産業能率大学出版部)の中から一部を抜粋し、中国・インドでの交渉術や、勝ち抜くためのノウハウを紹介します。

今後の世界展開に欠かせない「インド」

これまで中国人とは長く付き合い、友人もたくさんいますし、日本人に顔が近いので表情が読めますが、インド人は非常に分かりにくいと思います。一般的にインド人の態度は横柄なケースが多く、これについて友人のインド人に聞いたことがあります。

 

「インド人は社会の底辺の人が断然多く、中位層や上位層は極端に少ない。そのため、海外に来ている人たちは極めて少なく、どうしてもエリート意識から上から目線になってしまう」と言っていました。

 

東京にある各国大使館に数多く出向きましたが、インド大使館は態度が大きく、商務関係の人たちも頭が高かったことを覚えています。一方、中国大使館はにこやかに日本語を駆使する人が多く、仲良くなった商務担当公使は昇格され、帰任される時に送別会を実施しました。

 

最近、知人が言っていました。

 

「中国人とインド人が商売すると両方とも全く信用していないから、信用できる人間を仲介させたらよい。それは真面目で正直で契約も守る〝日本人〟だ」

 

最強の中国人とインド人の間に入る日本人が1人でもいれば、彼らは安心すると言います。2つの国は互いに隣接する2つの地域で占領し合って解決に程遠い状態です。それでも中国の主席が訪印した折には両軍が対峙する中で、インド首相の故郷で彼の誕生日を祝福していました。性悪説がはびこるすさまじい交渉の世界が見えてきます。

 

ただ、互いに相違する点が多いことから、力を合わせれば理想的なグローバルチームをつくれると言う人が多いのも事実です。今後世界展開で絶対欠かせないインド人、その実相を若い時から知って、深く入り込むことが大切だと思います。

 

日本在住19年で日本人のインドビジネスを先導するインド人の友人、サンジーブ・スインハさん(IJIPアセットマネジメント株式会社代表取締役社長)と、インドで臥薪嘗胆7年にして現地会社と現地人を育て上げ、現在は難しいインドビジネスの水先案内人を務める森六インド元社長・砥川武雄さんに伺ったことと、主宰している研究会などで議論したことを報告します。

価格交渉の際は「元値の7割引」を目指す

インドは日本と異なり、正価や値札が基本的にない国です。売り手と買い手の力関係で、自分が主張して説得できたのが価格と思う商習慣の国であり、世界でも稀有の国と言えるでしょう。

 

インド人とビジネス経験のある日本人は、インド人の交渉力に閉口したという話をよく聞きます。そこで、インド人と価格交渉をする時のポイントをいくつか挙げておきましょう。

 

●売り手にまず価格を言わせる。その7割引きを目安にして交渉を始める。

 

●今だけでなく、これを機会にもっと大きなビジネスになることをにおわせる。

 

●最初は最小単位で交渉し、徐々に数を上げて価格の下げを求める。ひたすら交渉、交渉、交渉、そして商売、商売、商売でいくと道が開けることがあり、その後はうまくいくケースが多い。

 

●始めは口頭のやりとりだが、交渉が進んできたら、紙に値段を書いて、さらなる交渉に入っていく。

 

●その際、絶対打ち負かされず、「高い」と繰り返し言い続ける。

 

●「他にも買うから」や「他の人も紹介するので、もっとまけろ」などと3回くらい言い続け、相手が根負けするのを待つ。すると折れてきて、当初の6割引きくらいで決着する。

本連載は、2016年6月30日刊行の書籍『アジアビジネス成功への道』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

アジアビジネス成功への道

アジアビジネス成功への道

平沢 健一

産業能率大学出版部

アジアの14ヵ国で成功を収めた14人の経営者と、世界4カ国20年の経営経験をもつ筆者が、グローバルビジネスの中心となってきたアジアビジネスでの成功の秘訣を語る。アジアビジネスでの苦労や成功体験はもちろん、アジア各国で…

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