(※写真はイメージです/PIXTA)

最大税率55%と、相続税の負担が重いことで知られる日本。そのため、「海外に資産を移しておけば節税できる」と考える人も少なくありません。しかし、近年国税庁はこうした「海外資産」にも目を光らせているそうです。79歳女性の事例をもとに詳しくみていきましょう。多賀谷会計事務所の税理士でCFPの宮路幸人氏が解説します。

妻も知らないお金…税務署はどうやって見つけたのか?

今回、親族も知らなかった海外資産について、なぜ税務署は知ることができたのでしょうか?

 

2018年から、OECDの策定した国際基準「共通報告基準」(CRS)に基づき、非居住者の金融口座情報は加盟各国と自動的に情報交換されるようになっており、新たに海外の銀行口座や証券口座を開設する方は、ほとんどの金融機関においてマイナンバーを登録しなければならなくなっています。

 

このため、海外の銀行口座や証券口座であっても、マイナンバーが紐づいていれば、国税庁は口座情報を入手することができます。

 

また、海外から100万円超の送金をする場合や送金受取をする場合には、銀行から税務署へ支払調書の報告が義務づけられています。

 

さらに、5,000万円超の資産を海外で保有している場合、確定申告の際に必ず「国外財産調書」の提出が必要です。

 

国税庁は海外資産の取り締まりを強化

国外の財産として対象となるのは、預金や有価証券、不動産など、ほぼすべての資産です。

 

この国外財産調書の提出を促進するため、税務署は罰則を強化しており、国外財産調書が未提出である場合や提出漏れの資産から収益があった場合、加算税が課されることとなっています。

 

2019年には実際に国外財産調書の未提出より告発をした実績があることから、国税庁は日本人の海外資産について取り締まりを強化していることがわかります。

 

今回、税務署は、このCRSで得られた海外の口座情報をもとに、Jさんの「海外資産」を見つけ、税務調査を行うこととなりました。

 

海外資産を保有している人は要注意

近年、富裕層が資産を海外に移すという動きがあるほか、いままで海外の資産運用に興味がなかった人でも、最近の円安傾向を受けて、海外への投資に注目している人も多いのではないでしょうか?

 

しかし、税務署や国税庁は海外資産の情報収集や税務調査を強化しています。その理由としては、今回紹介したもののほか、海外資産の申告が漏れていた場合、多額の申告漏れや追徴税が発生しやすいという点も挙げられるでしょう。

 

もし、海外財産について税務調査の対象となった場合、調査官は税務調査前に、租税条約や法定調書などを調べあげ、事前に問題点を把握している可能性が高いです。そのため、海外に財産をお持ちの方は充分にお気をつけください。

 

 

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

 

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