相続財産の中に含まれているかもしれない、「計画道路」
世の中には「計画道路」というものが存在します。都市計画で定められるもので、その名の通り「これからこの部分に道路を通しますよ」という計画に該当する道路のことです。
だからと言って、計画道路に該当する土地に「ここは〇年に道路になります」と看板が出ているわけではありません。計画道路は見えないところで計画が進められているのです。言葉は悪いですが、本人の承諾もなく役所が勝手に「ここ、道路ね」と線を引くイメージです。
あなたは自分の土地の一部が道路になると想像したことがありますか? おそらく一般的にあまりそういう想像はしないでしょう。
ところがその「想像もしなかったこと」が起こるのが計画道路なのです。
何かの理由があって所有者本人が役所に行って調べたり、何かの折に役所から伝えられたりして「そうだったのか」とわかるという代物です。
自分の土地で自由にできると思っていたけれども、ある日突然「あなたの土地、計画道路にかかっていますよ。ほら線が引かれているでしょう」と宣告を受けてしまう。まさに青天の霹靂(へきれき)です。
計画があるんなら、さっさと言ってよ、こっちにも計画があるんだから、と言いたくなりますよね。
計画道路に該当する土地を持っている場合、いずれ収用されるので建物の解体・建て替えや転居が必要となる場合があります。
計画道路は評価減の対象
では相続した土地が計画道路に該当していた場合はどうなるでしょうか。
将来、道路が入る土地なので、当然、建築制限がかかります。自由に建物を建てることはできませんし、売ろうとしても買い手がつきにくいこともあるでしょう。
すると当然、その土地は制限がかかっていない周辺の土地よりも価格が安くなるわけです。
そこをわかっている税理士であれば、計画道路について調べたことを土地の評価に反映させ、土地の評価額を適正に算出して申告します。
建築に制限がある土地なので、当然評価は下がり、それに対して役所が反論してくることはありません。
もしこれを知らないと、前回記事の接道義務同様、適正な評価減を行わずに申告してしまい過大な納税をすることになってしまいます(⇒関連記事:『「お宅の土地、“細い道路に面しているもの”が多かったのでは?」⇒結果、納税済の10億円が戻ってきた…役所が教えてくれない《実は相続税が安くなる土地》の特徴【税理士が解説】』)。
計画道路はいつ実現するかわからない
2022年に、新橋から築地に抜けて行く環状2号線が全線開通したのをご存じですか? この道路、なんとマッカーサー道路と言われています。
戦後、1945年から1950年まで、連合国軍総司令部(GHQ)が日本を占領し、マッカーサーが日本における最高権力者(GHQ最高司令官)として民主化を進めていたときに計画された道路なのです。
戦後78年にしてようやく実現したというわけです。
この例からもわかるように計画道路は実現がいつになるかわかりません。
数ヵ月前、港区内のマンションに住んでいるお客様で、マンションの横の道路を拡張するため、自分の土地を提供したという方がいました。
その土地の収用代金としてお金が入ってきたのでマンション所有者全員で分けて、1000万円ずつもらったそうです。
「思いがけないお金が入ってきました」と喜んでいらっしゃいました。
計画道路は都内にけっこうあります。戦後きれいに区画整理されたところよりも、戦前から人が多く住んでいて、こう言っては失礼ですが、ごちゃごちゃしているところは「将来的にやりましょう」と計画に入っていることが多いようです。
東京では足立区や北区などに多いですが、中には渋谷区にもあります。さすがに新宿区の四谷や千代田区の二番町・三番町あたりの武家屋敷だったところにはありませんけれどもね。
天野 隆
税理士法人レガシィ代表社員税理士。公認会計士、宅地建物取引士、CFP。1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。アーサーアンダーセン会計事務所を経て、1980年から現職。『やってはいけない「実家」の相続』『相続格差』(青春新書)他、103冊の著書がある。
税理士法人レガシィ
1964年創業。相続専門税理士法人として累計相続案件実績件数は28,000件を超える。
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