学校を卒業して就職した会社で一生働く、というケースは珍しく、転職が当たり前の時代。さらに「退職した会社とは金輪際、さようなら」ではなく、退職した人材を再び受け入れるアルムナイ採用が注目を集めています。企業側にも雇われる側にも大きなメリットがありますが。デメリットといえる側面も。みていきましょう。
年収750万円・42歳のサラリーマン「先輩、またお世話になります!」と戻ってきた〈出戻り社員〉に憤りのワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

転職→再び戻ってきた「後輩社員」に「先輩社員」が憤慨のワケ

企業側にも雇われる側にもメリットのあるアルムナイ採用ですが、良いことばかりというわけではなさそうです。

 

――出戻り組の後輩社員に納得がいかない

 

そう吐露をしたのは、42歳のサラリーマン。現在勤めているのは、従業員500人程度の情報系企業。5年前に大手に転職し、そして5年ぶりに再び戻ってきた1つ下の同僚に対して、なんとも言えない憤りを感じているといいます。

 

――彼が辞めたとき、急な退職だったから非常に迷惑を被った

――転職したのは同業の大手

――「先輩、またお世話になります!」とアルムナイ採用で5年ぶりに戻ってきた

――自分よりもランクが上で、年収も100万円以上違うらしい

 

大手に転職し、そこでキャリアを積み、実力も磨いて戻ってきたなら男性も納得できたといいます。しかし、大手に転職したとはいえ、そこで積み重ねてきたキャリアが戻ってきた会社で活かせるかどうか未知数(むしろ、いまのところ、久々の古巣での業務に慣れてなく、足を引っ張ることも)。

 

厚生労働省の調査によると、情報通信業/従業員規模/100~999人企業に勤務する42歳大卒サラリーマンの給与は、月収で46.8万円、年収で745万円。一方、従業員規模1,000人以上企業では、月収は同じ46.8万円ですが、年収は812.1万円。70万円弱の差が生じています。アルムナイで戻ってくる際、いまの給与よりも高い金額&退職前よりも高いランクを提示されたのでしょう。年収は先輩社員よりも100万円以上高くなって出戻ってきたわけです。

 

このようにアルムナイを積極的に採用することは、既存社員への影響を考える必要があります。「あいつは一度退職したが、俺らはずっとここで頑張ってきたんだ!」という自負もあるでしょう。そこで待遇や給与に実際以上に差が生じてしまうと、大きな不満になってしまうわけです。

 

余計な衝突・摩擦を避けるためにも、アルムナイ採用においては既存社員への配慮も必須です。

 

[参考資料]

総務省『労働力調査』

厚生労働省『職業安定業務統計』

株式会社リクルート『企業の人材マネジメントに関する調査2023』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』