年金の繰下げ受給者は増加傾向…背景にある「老後不安」
現在、老齢年金の受給開始は基本的に65歳ですが、希望すれば、60~64歳で早めることも、66~75歳で遅くすることもできます。早めるのは「繰上げ受給」といい、1ヵ月早めるごとに0.4%、最大30%減額。遅くするのは「繰下げ受給」といい、1ヵ月遅らせるごとに0.7%、最大84%増額となります。
厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金(5年年金を除く)の受給権者3,433万6,782人のうち、繰上げ受給者は369万3,670人で、全体の10.8%。繰下げ受給者は67万2,466人で、全体の2.0%。経年でみてみると、繰上げ率は低下傾向、繰下げ率は上昇傾向にあります。
一方、厚生年金保険(第1号)受給権者2,804万5,102人のうち、繰上げ受給者は20万6,757人で、全体の0.7%。繰下げ受給者は37万4,481人で、全体の1.3%。経年でみてみると、繰上げ率、繰下げ率ともに上昇傾向にあります。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』によると、老後生活に対しては不安を覚えている人は、60代で74.5%、70代で67.2%に達します。また不安の理由として最も多いのが「十分な金融資産がないから」で、60代では65.7%、70代では65.4%。「年金や保険が十分ではないから」が、60代で53.6%、70代で61.8%と続きます。
――少しでも年金を増やしたい
そんな思いの人が多いのでしょう。また繰上げ受給と繰下げ受給、比較してみると、やはり、受給額が増える繰下げ受給を選ぶ人のほうが増えていることがわかります。
そんななか、繰上げ受給を選択した高橋健一さん(60歳・仮名)。65歳から受け取り開始であれば月17万5,000円を受け取れるはずでしたが、現在、30%減の月12万2,500円を受け取っているといいます。