学校を卒業して就職した会社で一生働く、というケースは珍しく、転職が当たり前の時代。さらに「退職した会社とは金輪際、さようなら」ではなく、退職した人材を再び受け入れるアルムナイ採用が注目を集めています。企業側にも雇われる側にも大きなメリットがありますが。デメリットといえる側面も。みていきましょう。
年収750万円・42歳のサラリーマン「先輩、またお世話になります!」と戻ってきた〈出戻り社員〉に憤りのワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

退職したらさようなら、はもう古い…出戻り社員を積極的に採用する時代へ

最近、採用に絡んで耳にする機会が増えている「アルムナイ」。alumnusの複数形で、「学校の同窓生・卒業生」を意味する言葉ですが、人材不足に悩む企業にとって、退職した社員へのアプローチが問題解決につながると注目されているのです。

 

そもそも、以前はOB・OGと呼ばれていた離職者・退職者。昨今のジェンダー問題と絡んで「アルムナイ」という言葉が使われるようになったという背景があります。

 

一度、会社を離れたとはいえ、アルムナイは自社に対してある程度の理解があり、通常の採用で人材を確保するよりも、その後の業務がスムーズ。また元々接点のある上司や同僚を通して直接声をかけ採用に至るケースが多いことから、コスト削減にもなるというメリットも期待できます。

 

「積極的にアルムナイ採用を行っている」と退職時に人事から言われた経験がある人もいるでしょう。株式会社リクルートが行った『企業の人材マネジメントに関する調査2023』では、アルムナイネットワークを通じた採用を行っている企業は1割強。またアルムナイネットワークの構築に取り組んでいる企業は約3割に及ぶとしています。またそのいずれも、採用はうまくいっている傾向にあるといいます。

 

離職者・退職者にとっても、“次”がキャリアの終着点とは限りません。今後のキャリアが広がるという点をみれば、企業側にもアルムナイ側にもメリットは大きいというわけです。

 

メリットの大きなアルムナイ。注目の背景にあるのは、売り手市場による採用難易度が上昇していることが挙げられます。昨今の有効求人倍率や失業率の推移を示したのが【図表1】。コロナ禍の落ち込みがあったものの、リーマンショックを経た後は、失業率は下降基調、有効求人倍率は上昇基調にあることが分かります。

 

【図表1】完全失業率と有効求人倍率の推移

 

ただ従業員規模別に求人倍率をみていくと、従業員5,000人以上の大企業では2024年3月卒で0.41倍と買い手市場。規模の小さな中小企業ほど、売り手市場のなか人材不足に四苦八苦しているのが現状です。