年金だけではどうやら暮らしていけないらしい……そのような認識が広がり、早め早めの資産形成が当たり前になっているなか、貯蓄額が目標に達し、悠々自適な老後生活に突入する高齢者たち。しかし、一度手に入れた生活がずっと続くとは限らないようです。
よし、2,000万円貯まったぞ…「年金2人で月32万円」、余裕の老後を夢見た「65歳夫婦」の大誤算。SNSから始まった「老後崩壊の危機」 (※写真はイメージです/PIXTA)

60歳定年夫婦。貯蓄は目標の半分だったが…

――老後を生きていくためには、いくら必要なのか?

 

一人ひとりの異なるものですが、資産形成を進めるうえで、ある程度の指標はほしいもの。実際に年金世代がどれほど貯金があるのかというと、60代夫婦で平均2,588万円、中央値で1,200万円。70代夫婦だと平均2,188万円、中央値で1,100万円です。また貯金の目標残高は、60歳夫婦で平均3,397万円、中央値が2,000万円、70歳夫婦で平均2,723万円、中央値が2,000万円でした

 

*金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査2023年(二人以上世帯調査)』より。貯蓄額の数値は金融資産保有世帯のもの

 

目標額に達しているかどうかは別として、目標額としては2,000万円というのが、ちょうど真ん中の金額。さかのぼること5年前。老後は夫婦で2,000万円ほど足りないと物議を醸した、「老後資金2,000万円不足問題」による刷り込みでしょうか。老後資金の目標額を2,000万円と回答する人が多いようです。

 

吉田豊さん(仮名・65歳)、裕子さん(仮名・65歳)夫婦もあの騒動のインパクトが大きく、退職金を除いて「2,000万円」というのが貯蓄の目標だったといいます。

 

お互いが共働きで60歳が定年ではありましたが、その時点で預貯金は1,000万円を超える程度だったとか。

 

――住宅ローンの返済と教育費と……これから資産形成を本格化させるぞ、というタイミングで定年を迎えました

 

あらゆるライフイベントが後ろ倒しになっている昨今、定年年齢に達しても、老後資金の目標額に達していないことはよくあること。吉田さん夫婦は、ともに再雇用制度で会社に残り、資産形成を加速させていったといいます。そして5年間で1,000万円ほどの預貯金をプラス。

 

――よし、2,000万円貯まった!

 

目標としていた老後資金2,000万円に達し、65歳、年金を受け取り始めるタイミングで、気持ちよく仕事からも引退することができたといいます。