〈13億円〉→〈7億円〉に買い叩かれるケースも…売り手企業が「大損しない」ために必ず知っておきたい〈買い手企業〉の選び方【M&Aのプロが助言】

〈13億円〉→〈7億円〉に買い叩かれるケースも…売り手企業が「大損しない」ために必ず知っておきたい〈買い手企業〉の選び方【M&Aのプロが助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

顧客の利益を優先して交渉支援をする「M&A仲介サービス」。しかしながら、このサービスを利用し、「仲介会社」や「買い手企業」からの提案に応じる形で事業売却を進めることが、売り手企業が事業売却で失敗してしまう大きな要因となっているという現状があります。M&Aを検討する際に、売り手側が留意すべき重要なポイントを、オーナーズ株式会社代表取締役社長の作田隆吉氏が、詳しく解説します。

買い手の「競争環境」がいかに重要か

ここで、買い手の競争環境の重要性を示す事例を一つ、当社の支援案件のなかからご紹介します。

低い株価評価を受けたA社のケース

A社オーナーは、50代ながら事業承継を検討しており、大手M&A仲介会社と面談して情報収集をしていました。某大手M&A仲介会社からは、具体的に約7億円の株価評価を受けており、この値段であれば、最短3ヵ月ですぐに買い手が見つかる、というアドバイスも受けていました。同仲介会社は、論拠の乏しい簡便法である「年倍(買)法」による評価を行っていたものと思われます。

 

仲介会社の提案に納得できなかったオーナーは、当社に相談に来ました。

 

当社では、仲介会社とは異なるアプローチで株価を試算、12−14億円の評価を提示しました。さらに当社では、独自の売却アプローチを採用し、買い手の競争環境を作り、よりよい条件を目指す提案をしました。

 

当社の支援のもとで売却プロセスを進めたところ、結果として買い手から約13億円の提案を勝ち取ることができました。当初の株価評価と比較すると、およそ倍の評価です。これこそが、買い手の競争環境を作って売却プロセスを進めることの威力といえます。

「低い株価評価」が交渉の出発点となってしまう

売り手がよい条件を勝ち取りにくい状況を作り出している要因は、ほかにもあります。それは、M&A仲介会社の「株価算定書」です。具体的には、①そもそもM&A仲介会社の提供する株価算定が買い手の評価目線と異なる問題、②その株価算定書が売り手と買い手、双方に開示される実務上の問題、の2点です。

 

先述しましたが、仲介業界で広く採用されている「年倍(買)法」という株価評価手法は、営業利益(またはその他利益指標)の数年分に純資産を加算して、株式価値を計算する簡便法です。

 

年倍(買)法に基づく株式価値=営業利益(またはその他利益指標)の数年分+時価修正純資産

 

計算式が非常に簡単で理解がしやすい計算方法であり、M&A仲介業界で広く使われています。しかし、同法はファイナンス理論的になんら根拠がなく、買い手はそもそも年倍法に基づく株価評価をもとに意思決定はしません。利益指標に乗ずる年数は、業界ごとに相場が固定的に決まっており、成長企業ほど評価が低くなってしまう問題点なども孕んでいます。

 

M&A仲介サービスにおいて、この特に論拠もなく、買い手の評価手法でもない年倍法で試算した「株価算定書」が、売り手と買い手の双方に開示され、実質的に交渉の出発点として大きな意味を持つ場合があります。これが、仲介会社の株価算定書のもう一つの大きな問題です。

 

こうしたアプローチは、売り手にとって、正当な価値での事業売却を実現することを遠ざけるものであり、オーナー経営者としては避けるべきものです。参考情報としての株価は、買い手が実際に行う評価手法を用いて試算することが重要です。

 

さらにいえば、買い手の評価手法で試算した株価を目標とするのではなく、それを上回る好条件を勝ち取るために、買い手の競争環境をいかに十分に作って売却プロセスを進めるかが重要なのです。

 

 

作田 隆吉
オーナーズ株式会社
代表取締役社長

 

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