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「安全だ」と考えて多くの貯金を銀行に預けている人は、少なくないのではないでしょうか。しかし、実はその選択が将来的に大きなリスクを伴うことになるかもしれません。税理士の安江一勢氏が、この一般的な選択に潜む思わぬリスクを解説します。現代の経済状況や物価上昇を踏まえた上で、銀行預金だけでは守りきれない資産の価値。老後の生活を安心して送るために、今すぐ知っておくべき対策とは?

友人がNISAを始めたと聞き…

定年を迎え、妻と二人での老後生活がはじまった65歳の茂雄さん(仮名)。昔からの友人の清さんとゴルフをしていると、お金の話になりました。

 

「茂雄さんは、資産の運用って、どうしてる?」

 

お金のことに疎かった茂雄さんは退職金もこれまでの貯金もすべて銀行預金。その金額は5,000万円ほど溜まっていました。清さんからの質問に、少しうろたえながらも、正直に答えました。

 

「私は正直、そういうのに疎くって。全部、銀行に預けているよ。ほら、貯金には税金もかからないし、無くなることもないし。投資って危ないイメージあるだろ?」

 

「そうだよな、俺も最初は危ないと思ってた。でもね、新NISAでリスクの低いものだったら、銀行預金と変わらず、ほったらかしておけば良いし、むしろ銀行預金よりもお金が増える可能性もあるし。10年くらい使わないお金があるなら結構やってみる価値はあると思う。もちろん危ないものもあるから、何でもやれば良いってわけではないけどね」(清さん)

銀行に預けておけば安心?

清さんが勧めている投資は「長期投資」のことを指しています。短期売買での運用ではなく、投資信託などに預けて、長期的に運用をする方法です。2024年から始まった新NISAでも利用できるものです。

 

投資なので、お金が減るリスクももちろんありますが、昨今の物価高騰の影響などを考えると、銀行の定期預金にお金を預けていても、その物価の上昇率に利息が追いつくことはほとんどありません。1,000万円のお金を10年間定期預金に預けていても、およそ2,000円しか増えません(金利0.02%で計算)。

 

一方で、投資商品や経済状況にもよりますが、長期に運用をする投資信託の場合には2,000円を越えることがほとんどです。比較的リスクの低い商品であっても、10年以上の積み立て期間があれば、2倍になるものも少なくありません。

 

これからの物価上昇のリスクを考えると、銀行に預けておけば、お金が無くならないというわけではないのです。今、1,000万円で買えるものが10年後に同じ金額で買える可能性は限りなく低いからです。

「貯金」に税金がかかる?

また、考え方によっては、貯金に税金がかかるとも考えられます。家族構成などにもよりますが、多額の現金を所有したまま相続が発生した場合、その貯金には相続税が課せられます。文字通り、「お金は墓場まで持っていくことはできない」のです。

 

当然、現金と同様に、投資信託として保有している資産にも相続税がかかるので、老後は過度な貯金はせずに、早めに相続対策で贈与を行ったり、あなた自身や大切なパートナーのために使ったりした方が余計な税金を課せられずに済みます。

 

茂雄さんのように、特に何の意味もなく、銀行に貯金をしておくという選択をすると、お金も増えないどころか、税金も課せられることになってしまうのです。せっかくこれまでに稼いだり、貯めたりしたお金は大切に守っていきたいものですね。

 

まずは少額でも良いので、長期投資をすることから始めてみましょう。幸せな老後を送るためにも、お金と向き合っていきましょう。

 

 

安江 一勢

税理士

 

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