●先物とオプションの清算が重なるメジャーSQを6月14日に控え来週はボラティリティ上昇の可能性。
●例えばSQ前に日経平均が39,000円を超えて上昇なら、デルタヘッジや裁定買いなどで一段高も。
●通常SQ前の株価の上下変動は一時的なものだが、今回はトレンド形成も考えられるため要注意。
先物とオプションの清算が重なるメジャーSQを6月14日に控え来週はボラティリティ上昇の可能性
6月物の株価指数先物とオプションは、6月13日が取引最終日となり、翌14日に特別清算指数(SQ)の算出を迎えます。今回は先物とオプションの清算が重なる、3ヵ月に1回の「メジャーSQ」です。一般に、メジャーSQの週は、先物やオプションの取引主体がSQ直前の限られた時間で取引判断を迫られるため、清算価格を巡る思惑的な売買が膨らみやすく、株価は一時的に大きく上昇(あるいは下落)することがあります。
そこで、日経225オプションの取引動向を確認します。6月物コールオプションの建玉(たてぎょく、未決済残高のこと)は、行使価格38,000円、39,000円、40,000円で、比較的大きく積み上がっていることが分かります(図表1)。そのため、SQの前日や前々日あたりで、日経平均株価がこれらの水準付近に位置していた場合、変動率(ボラティリティ)の大幅な上昇が予想されます。
例えばSQ前に日経平均が39,000円を超えて上昇なら、デルタヘッジや裁定買いなどで一段高も
例えば、SQの数日前に日経平均が39,000円を超えて上昇したとします。この場合、行使価格39,000円のコールオプションの買い手には利益が発生しますが、売り手には損失が発生します。この時、売り手はコールオプションを買い戻そうとしても、すでにコールオプションの価格は急騰しており、買い戻しは難しい状況です。そこで、売り手は別途、日経225先物を買って、「デルタヘッジ」を行います。
デルタヘッジを行ったコールオプションの売り手は、日経平均の上昇で先物の買いポジションに評価益が発生するので、コールオプションの売りポジションの評価損を補填できます。なお、コールオプションの売り手による先物買いで、先物が現物に対し一時的に割高になると、裁定業者(主に証券会社)が先物を売って同時に現物を買う「裁定買い取引」を行うことがあります。その結果、現物である日経平均は一段と上昇しやすくなります。
通常SQ前の株価の上下変動は一時的なものだが、今回はトレンド形成も考えられるため要注意
しかしながら、その後、何らかの悪材料で日経平均がSQ前に39,000円を割り込んで下落した場合、デルタヘッジを行ったコールオプションの売り手は、コールオプションの売りポジションの評価損が消滅する一方、先物の買いポジションに評価損が発生するため、先物を売ってデルタヘッジを解消します。これが裁定業者による裁定買い取引の解消(先物の買い戻しと現物の売却)を誘発し、現物である日経平均は一段と下落しやすくなります。
このように、来週の日経平均はSQ前に、建玉の積み上がった行使価格前後でボラティリティ急騰が見込まれますが、通常はSQ前のポジション調整に伴う一時的なものと判断されます。ただ、5月27日付レポートで解説した通り、今回は日経平均の日足が一目均衡表の雲(図表2、6月4日から7月8日までは38,200円付近~38,900円付近)を大きく上抜ければ上昇トレンド、下抜ければ下落トレンドを形成することになるため、注意が必要です。
(2024年6月4日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『来週はボラティリティ上昇の可能性 日経平均株価の「注意すべき値動き」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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