圧倒的な人手不足から、企業側よりも求職者の方が立場が強くなってきたといえるのが現在の転職市場です。こうした売り手市場の中、オファーする企業側はどのような視点・距離をもって求職者と向き合えば良い結果をつかむことができるのでしょうか。本記事では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、企業側が求職者に上手にオファーするにポイントについて解説します。
売り手市場に企業はどう対応する?オファー殺到の「超優秀人材」を獲得するためのテクニック【人材紹介のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

先手必勝がセオリーだったが、いまは2番手・3番手が有利

では、企業が上手なオファーを出すためには何が重要なのでしょう。これには、いろいろな考え方があります。たとえば、先手必勝で一番にオファーを出して「ぜひ来ていただきたい」と熱心にアピールする。これは伝統的な正攻法です。孫子の兵法にもあるように、絶対的に優勢でないのであれば先手必勝が良策だとむかしから言われています。他社と比べて圧倒的な優勢であるとわからないのであれば先手必勝、これはセオリーです。

 

しかし、オファーを早く出した先頭グループはダシに使われて、おそらく選んでもらえない確率が高いでしょう。というのも、今の状況では、待てば待つだけ次々に立候補する企業が現れるわけです。Aさんの立場から見れば大本命の本当に行きたい1社を除けば、早く決断するメリットはほとんどありません。

 

一番有利に働くのは、2番手から3番手グループに位置する企業です。先手、先頭に行く企業は出したオファーを基準値と受け取られ、他社との交渉にそのレターが使われてしまいます。その一方で5番手、6番手まで行ってしまうと、今度は位置が後方に下がってしまいます。

 

ここで気をつけたいのは、「転職活動疲れ」というものがあることです。Aさんは高い評価を受け、よいオファーを受取っているので、活動自体はむしろストレスより心地よさを感じているかもしれません。

 

とはいえ、貴重な時間を割いて選考にエネルギーを注ぐと、一定期間の活動では疲労が蓄積するものなのです。企業と違って個人は長期間の面接に際限なく時間を投入できるわけではありません。ただでさえ「辞めたい」ということで活動しているのですから、現職に留まる時間を短くなることもメリットとなります。

 

すなわち、転職活動にも限界があるのです。したがって位置が後方に下がり過ぎていると、順番が回って来るまでに終わってしまうという可能性もゼロではありません。よほど横綱相撲が取れる企業でなければおすすめできません。