財産評価の引下げのためだけに土地を購入するのは禁物
昭和が平成になった頃、土地の価格が急騰したことにより、借金をして土地を購入し相続税評価を下げることが、相続税対策の大きなテーマとなりました。その後、土地の価格が下落し、相続税対策をした当人が借金負担で苦しむことがしばしば生じました。
そうした苦い歴史を経て、今、新たな相続税対策として土地を購入することが見直されようとしていますが、次の点がバブル景気の頃との大きな違いです。
まず、以前のように住宅向けの新築アパート建設ではなく、駅の近くなど交通の利便性の良い場所での事業者向け(テナント)の中古収益物件を検討する必要があります。すでに空き家が増えている住宅は、将来的にますますリスクが高くなります。立地の良いテナント物件なら、たとえ退出されても新たな入居者がすぐに見つかります。
相続税上土地の評価額を下げるだけでなく、自分や相続人の日々の生活の糧になる収入をもたらす不動産の取得が重要なポイントです。
「相続税の節税」を囁く業者の甘言には注意が必要
そして、もう一つは借金ではなく現金、つまり手持ちのお金で買うべきだということです。これも、将来相続人に返済義務のあるマイナスの財産を残さない、という方針として大切な心得です。
と同時に、四半世紀前と比べ沢山の人々が多額の資金を持つ時代になっていることが背景にあります。沢山あるお金を、そのままの価値で評価される形でなく相続税評価の低い土地という形に変える、という積極的対策です。
低金利の預金を抱える一方で、高い利子のある借入をする必要はありません。要するに、土地の購入はピンポイントの視点で考えるのであり、安易な賃貸住宅の建設など、相続税の節税を囁く業者の甘言には注意が必要です。
21世紀型の土地の取得には、税金対策というよりも将来の相続人に良い財産を残していこうとする、相続させる側からの財産の権利調整という配慮があるのです。