相手の望みを察知して、それに合わせた対処を
相続を円滑に終わらせ将来も相続人同士が仲良く付き合っていくためのコツとして、相続手続に於いては自分にとっては無駄(益のないこと)だと思うことを進んでする、という心構えが大切です。
無駄とは、もう少し具体的にいえば相手(人)に対して思いやりをもって対応していく心構えを持つことです。最も明確な方法は、財産の相続について自ら譲歩する、つまりより円満な遺産分割が出来そうだと判断したら、自分の取り分を法定相続分より少なくしても良いと積極的に申し出ることです。無論、その背景には相手が望んでいる相続の形を察知して、それに合わせた対処をするという気配りがあるわけです。
相手のためにする無駄は、たくさんあります。皆が価値があると考える財産を自分は相続しないように自然にふるまう、相続に関する様々な手続きについては率先してまとめ役となり作業をする、誰かが勝手なことを言っても我慢して言わせてあげる等々、無駄だと思う時間を費やすことをごく当たり前に心掛けることが大切です。
「合理性」だけにとらわれず、相手の立ち場で考える
印鑑証明書や戸籍謄本なども他の相続人から「取ってきてほしい」と言われたら快く速やかに取ってくる、こんな小さな自分の中では無駄なことと思うようなことをきっちりやることが、最終的に円満な相続につながっていくのです。
相続手続というのは合理的に考えては何もまとまらないことの連続です。にもかかわらず、最も重大な行為である遺産分割において法定相続という考え方は象徴的とも言える合理的発想であり、被相続人との個々の関係を鑑みれば、どの家族もまったく同じ割合で財産を分けるなどという発想は実は非合理極まりないとも言えるのです。それだけに、一度建前だけの合理性を排除し、自分には損だと感じても相手の立ち場で考えてみることが重要なのです。
考え方のポイントは「心ある無駄をする」という言葉に集約されます。相手のことを考えて行なう無駄の思想は、実は最も大切なことなのです。そして、それが幸せな相続のための最大の権利調整です。