(※写真はイメージです/PIXTA)

どれだけそのときの経営者が優れていても、次へ繋ぐ「承継」の準備ができていなければ、企業経営としては失敗といっても過言ではありません。育ててきた自社を守り継ぐ、その準備はいざとなってからでは遅いのです。本記事では、A社の事例とともに中小企業における事業承継の事前準備について、中小企業の経営支援をおこなうアイエスピー合同会社の代表で中小企業診断士の豊田元幹氏が解説します。

社長不在で会社は大混乱

各取引先への支払いタイミングは5日、10日、15日……と5日単位だったため、入院期間中に支払い漏れが発生し、取引先に迷惑をかけることになってしまいました。

 

奥様は諸事情で社長と不仲であったことからA社長の会社とは関係のない企業で仕事をしており、該当業務にまったくタッチできる状況にありませんでした。

 

急きょ会社員として勤務している長男が、仕事の合間を見て手伝いに来てくれたものの焼け石に水。最終的にA社長は3週間近く入院したのち、週に3日程度しか勤務できない状態となってしまいました。

 

トドメとなったコロナショック

さらに追い打ちをかけるようにコロナショックが発生。法人需要が一気になくなり、当社としても売上高がコロナ禍前の4割程度まで激減してしまいました。当面は融資や給付金などを活用し、しのいでいたものの、法人需要が以前のとおりに戻ることはありませんでした。A社長自身の健康面の不安からオンライン注文システム導入の判断ができなかったことで個人消費を取り込むこともままならず、売り上げ回復は叶いませんでした。

 

最終的に金融機関への返済も困難になり、倒産という結末を迎えた事例でした。

 

「後悔しています」A社長は無念で仕方ないといった様子でした。要因は、A社長が自身の健康状態を過信し、仕事を自分で抱え込み、いざというときに相談できる相手を周囲に作っていなかったことです。

相談相手を準備しておくことの重要性

このような事態を避けるには、事前準備をしておく必要があります。個人の健康面もさることながら、自社の状態を正確に把握し、経営判断の際の選択肢をより多く持っておくことで危機を乗り越えることができると考えております。

 

さまざまな相談先や相談内容がありますが、金融機関や主要取引先に加え、筆者は3つの機関と良好な関係を構築しておくことが重要であると考えております。理由を含め、以下に記載いたします。

 

1.顧問税理士との関係構築

経営者として、顧問税理士がおられないケースはまずないと思います。重要なのは、正確な経営数字の把握です。

 

現在、月次試算表はどのタイミングで入手できていますでしょうか。ベストは随時把握ですが、月末から10日程度で手元で確認できる状態であることが理想です。逆に、試算表の作成までに1ヵ月かかってしまうような状態では、情報の鮮度が落ちており、経営判断を誤る可能性が高まってしまいます。会社の情報をタイムリーに共有し、スピーディなフィードバックを得られる関係性を築いておくことが重要です。

 

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