企業価値最大化を実現し続けるCEOの要諦「主要論点3:事業ポートフォリオ戦略と組織戦略」【現役のCEOが解説】

企業価値最大化を実現し続けるCEOの要諦「主要論点3:事業ポートフォリオ戦略と組織戦略」【現役のCEOが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事では『企業価値最大化経営』(日経BP 日本経済新聞出版)から、著者の株式会社TS&Co.創業者兼代表取締役グループCEO澤拓磨氏が企業価値最大化を実現し続けるCEOの要諦として、「主要論点3:事業ポートフォリオ戦略と組織戦略」について解説します。

事業ポートフォリオ戦略と組織戦略

事業ポートフォリオとは、自社が所有・経営している事業群のことであり、一般的に、事業ビジョンの実現、全社企業価値最大化、リスク(不確実性)分散を目標に組成される。

 

事業ポートフォリオ戦略は、まず事業ビジョンの実現、全社企業価値最大化、リスク分散の3つの切り口で現状の事業ポートフォリオを評価し、既存(コア・ノンコア)事業、シナジー創出事業、企業価値創造(ROIC>WACCとなる事業)・破壊(ROIC<WACCとなる事業)事業、コングロマリット・ディスカウント(プレミアム)創出事業、リスク分散効果創出事業等をあぶり出す。

 

次に、事業ビジョンの実現、全社企業価値の最大化、リスク分散を実現するベストな事業ポートフォリオへの再編に向け、各事業領域に対する方針(成長投資、維持・自立、リストラクチャリング[分割・統合等]、縮小、再生、売却、撤退・清算、新規投資等)を固める。

 

最後に、方針に基づき、例えば、多角化を企図した成長戦略、人材活用を企図したスピンイン戦略(新製品や新市場を開拓するためメンバーが親会社を離れ半独立企業として起業し、親会社はこれに出資。新規事業がマイルストーンを達成すれば、親会社により買収され親会社に成功した新規事業が残る。リスクを取り独立した経営者は売却により起業家的利益を得られる)、リスク分散を企図したリスク最適化戦略(リスクの性質が異なる事業への新規投資)の実行等を検討するのだ。

 

事業ビジョンは、事業ビジョンを描く人物(CEO等)の世界観(世界とは何か・どう変化するか[未来]・どう変化しているか[現在]・どう変化してきたか[過去]に対する意志)、人生観(自分とは何者か・どう生きるか[未来]・どう生きているか[現在]・どう生きてきたか[過去]に対する意志)、時代観(時代とは何か・どう変化するか[未来]・どう変化しているか[現在]・どう変化してきたか[過去]に対する意志)に基づき構想される。

 

全社企業価値の最大化は、成長戦略の構想、シナジー享受(既存の強みと他要素が合わさることで単体で得られる以上の結果を得ること[相乗効果]。多角化成長等を志向することで享受できる)に加え、企業価値破壊事業からの撤退・売却、コングロマリット・ディスカウントの解消、親子上場解消等についても検討していく。

 

リスク分散は、システマティック・リスク(市場リスク。分散投資では消去不可能な市場全体が影響を受けるリスク)とアンシステマティック・リスク(個別リスク。分散投資により消去可能なリスク)を明らかにし、事業、地域、アセットクラス、時間の観点からリスク分散を検討する。

 

その他、企業固有の課題解決や有事の対応のために事業ポートフォリオ再編が求められることもあるが、事業ビジョンの実現、全社企業価値の最大化、リスク分散の3つの切り口を基本に事業ポートフォリオを選抜していくことに変わりはない。

 

次いで、選抜された事業ポートフォリオを通じ、企業価値最大化を実現し続けるために最適な組織戦略を検討する。経営学では組織・人材マネジメントと呼ばれるテーマである。

 

組織戦略は、組織コンセプトとグループ全体の組織構造(グループ組織図と言い換えてもよい)を構想した後、各社の役割、企業文化、社名、経営戦略、コーポレートガバナンス、所在地、資本金、決算期、報告セグメント、現場の組織構造(現場組織図と言い換えてもよい)の順に検討し具体化していく。

 

組織コンセプトは、強さ、柔軟さ、固さの3つの基本コンセプトより検討していく。組織の強さとは支配・シナジー・能動・迅速・集中・上質・多量等の特徴のことであり、カリスマによる集権的な支配構造等が強い組織をつくる。組織の柔軟さとは非支配・透明性等の特徴のことであり、分権を基本に求心力を働かせることで柔軟な組織が育まれる。組織の固さとは団結・心理的安全性等の特徴のことであり、強さ・柔軟さいずれのコンセプトを採用したとしても固い組織をつくることができる。採用すべき組織コンセプトはCEOのリーダーシップスタイル、選抜された事業ポートフォリオの業界特性やビジネスモデルにより異なるため、3つの基本コンセプトのうち特に強さか柔軟さかの見極めを誤らないよう注意したい。

 

グループ全体の組織構造は、組織コンセプトに基づき親会社・子会社・持分法適用会社・孫会社等の組織的関連性を組織図に落とし込む。例えば、強い組織をコンセプトとする場合は、過去の実績等より強い影響力を発揮可能な持株会社(ホールディングカンパニー)を親会社に、強い集権的求心力が働くピラミッド型の組織構造を採用する。柔軟な組織をコンセプトとする場合は、純粋持株会社を親会社に、各事業会社の自立・自走を重んじ分権的遠心力が働く文鎮型の組織構造を採用する等が考えられる。その際には、子会社やBU(ビジネスユニット)をどんな基準(業界別・製品別・地域別・顧客別等)で分類していくかも検討する。

 

各社の役割は、持株会社(純粋持株会社と事業持株会社がある)、中間持株会社、事業会社、機能会社のなかより検討していく。

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