経営実践の要諦2 愛と感謝を胸に経営を享受する
「愛と感謝を胸に経営を享受する」。この点が経営実践の2つ目の要諦である。
現在に生きるわれわれ世代は、先人が拓き築いてきた比較的治安のいい社会、物質的な豊かさ、優れた文化などを享受し生きている。自身の体や心にしても、ひそかに悲鳴を上げることがいくらでもあったと思うが、それでも音を上げずについてきてくれた。
当たり前に思える幸せな日常や未来への希望を抱けていることにおいても、育ててくれた両親、家族なくしては考えられない。未来を拓く強さだけでは限界があることも認識しておいていただきたい。
影響力(人を動かす力)について述べる。果たして人は強さだけに引かれて行動を起こすだろうか。強さだけでは、愛や感謝に引かれて行動を起こす人間に応援してもらうことは難しいだろう。
また、強さを形成する要素を一人の人間ですべて満たすことができるだろうか。どんな優れた人間でも時間的・能力的・社会的制約は免れず、一人の人間がすべてを満たすことは不可能であり、必ず助けが必要となるだろう。
一人で生きているつもりでも、社会はそのように形成されていない。缶コーヒーのCMに使われたキャッチコピーの通り、「世界は誰かの仕事でできている」のだから。
そして、強さを追い求め、強さを得た果てには、何を追い求めることになるだろうか。私の経験に照らせば、愛と感謝を胸に、大志・小志を問わず志を持ち、世のため人のために尽くすことに強さを使うことが、世界と自分との最適な関係性を育み、新たな経営機会とブレークスルーを生み続けることに気付いて、追い求めることになるだろう。
CEOもまた、経営を好きになり偏愛にも似たレベルで経営を愛し、ステークホルダーや世界全般のおかげで経営を行えていることへ感謝し、経営を享受することで大義名分が立ち、経営実践の大きな原動力を得ることとなる。
これは、功成り名を遂げた人物が、成功の秘訣をインタビューで問われると必ず述べることでもある。人が何かを実践する際の原動力となる絶対的な要素であり、あらゆる領域において不変の真理である。
この点について、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットは述べている。
まさに、我が意を得たりである。
以上述べた通り、愛と感謝を胸に経営を享受することが、経営を「実践」するうえで極めて重要となる。