日本人の平均寿命は男性が81歳、女性は87歳です。妻の年齢が夫と近い場合、もしくは夫よりも年下の場合、悲しいことに夫のほうが先に亡くなる可能性が高いでしょう。そのようななか、夫の死後、残された妻が受け取れる遺族年金額を事前に把握し、備えておくことが重要になってきます。本記事では影山さん(仮名)の事例とともに、高齢夫婦の遺族年金について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
夫婦で「年金月12万円」、贅沢せず慎ましく暮らしていたが…先に夫が逝った76歳妻が受け取る「衝撃の遺族年金額」。〈まだまだ生きる老後〉に待ち受けた“悲惨すぎる末路”【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金5万円の絶望生活

影山さん亡きあとの幸子さんの生活は悲惨すぎるものでした。物価高で水道光熱費や食費だけでもすぐに5万円を超えてしまうのです。貯蓄がすっかり尽きると、夏も冬もエアコンを我慢し、テレビは電源から切り、食費も削られるだけ削りました。1日が過ぎるのを待ち、ただ生きているだけという状態が続きます。

 

ぎりぎりの状態のところで、店をやっていたころの昔の常連客が様子を見かね、筆者のもとへ相談にやってきたのです。幸子さんへは、自宅から近い福祉事務所へ生活保護の申請を行うことを提案しました。住居はあるものの、生活していくのに必要なものですので、住宅扶助は受け取れませんが、約6万5,000円の生活保護費となり、年金受給分の約5万5,000円を引いた1万円程度の支給となったようです。

 

今後も公的年金だけでは厳しい時代

今回のケースでは、加入期間に現在の年金制度が確立されていない時代が含まれていることで、本人の老齢基礎年金を満額受け取ることができないというケースでした。

 

現在でも自営業の方のなかには、年金制度自体へ不信感を持たれている方も見受けられることがあります。会社員のように給与から天引きされる厚生年金と違い、国民年金は、自分自身で支払いをしなければいけません。国民年金の納付率は改善されつつあるとはいえ、令和4年度で80.7%と初めて80%を超えましたが、約20%は未納となっています。

 

現在では、60歳以降でも任意加入することが可能となっており、20歳から60歳までの40年間で未納期間がある場合は、65歳までに国民年金の納付をすることもできます。

 

幸子のケースでは、すでに65歳を過ぎていることや年金を受け取っているので、任意加入はできませんでしたし、任意加入も現実的ではありません。

 

内閣府が発表している令和5年版の高齢社会白書をみると令和3年の生活保護人員(総数)は201万人に対して、65歳以上の生活保護人員は105万人と生活保護を受けている半数以上となっています。

 

現在は、公的年金だけで老後生活を送ることが困難になっていることや任意加入期間に加入していなかった方もいることで、厳しい生活を送っていることが考えられます。今後の公的年金も、年金だけで老後の生活を送ることは難しくなると思われますので、自助努力で不足分を早いうちから準備することが重要でしょう。

 

<参考>

厚生労働省:令和4年度の国民年金の加入・保険料納付状況
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/dl/k_r04.pdf

 

内閣府:令和5年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/zenbun/05pdf_index.html

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表