(※写真はイメージです/PIXTA)

「高給取り」の代表、医師。求められる学力・資金力が一般水準より非常に高いため、その社会的地位も広く知られています。その一方で、医療業界には「悲惨」としかいえない現状があるのも事実です。

「年収1,000万円超え」は「夢がある」といえるのか

「医師=お金持ち」とは、大体の人が抱いているイメージではないだろうか。

 

まず、医師になるまでに膨大な教育費がかかることは、「医師=金がある」というイメージを増長させる要因になっているといえるだろう。私立の医学部に進学した場合、6年間の学費は、2,000万円弱~5,000万円弱に及ぶ。加え、留年もごく当たり前に起こりうる世界だ。1年在学期間が増えるたびに、数百万の出費が当然のように発生する。高所得者の親を持たない限り、まず叶えられない職業といってよく、また卒業後に十分に「元を取る」以上のことが可能でなければかけられない金額であるともいえる。

 

厚生労働省の発表によれば、医師の平均年収は約1,400万円(病院勤務の場合)。医師の親を持つ子の多くが医師になるのは、然るべき理由があるということだ。

 

「令和4年分 民間給与実態統計調査」において、日本人男性の平均年収は約563万円、女性は約314万円と報告されている。それを踏まえれば、医師の「高給取りっぷり」に羨ましさを覚える人もいるかもしれない。しかしここで一歩立ち止まって考えなければならない事実がある。それは、なかなか可視化されない医師の長時間労働問題だ。

過労死ラインの「2倍」働くことを国が許した

厚生労働省『医師の働き方改革概要』によると、病院常勤勤務医の約4割が年960時間超、約1割が年1,860時間超の時間外・休日労働をしているという実態がある。特に救急、産婦人科、外科や若手の医師は長時間労働の傾向が強い。

 

そこで今年4月から、新たな上限が適用されている。適用後、時間外・休日労働時間の上限 は、A水準では年間「960時間」、連携B水準(地域医療の確保のため、本務以外の副業・兼業として派遣される際に適用)、B水準(地域医療の確保のため、自院内で長時間労働が必要な場合に適用)、C-1水準(臨床研修医/専攻医の研修のために長時間労働が必要な場合に適用)、C-2水準(専攻医を卒業した医師の技能研修のために長時間労働が必要な場合に適用)では年間「1,860時間」となる。

 

年1,860時間の残業とは一体どういうことか。単純計算して1ヵ月約155時間の残業であり、月20日働くと仮定すれば、1日の残業は7.75時間。毎日15時間以上働いていることになる。

 

忘れないでほしいのは、これは政府が提案した残業時間の上限であるということだ。「せめて残業はこのくらいにしましょう」という時間が、年1,860時間。「研修医は300日連勤」という話すら存在する。将来の高給が約束されているとはいえ、その現状を耐えられるのだろうか。

 

ちなみに、一般的に「過労死ライン」と呼ばれている月80時間の残業は、20営業日、9~17時の一般的な会社で考えれば、9~21時の勤務ということになる。このことからも、医療業界の過酷さは見て取れる。

 

「それでもたくさんお金が貰えるんだからいいじゃないか」と考える人もいるだろうが、果たしてそうだろうか? 意見の分かれるテーマだろう。

 

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