「遺言」の調査で考えられる3つのケース
(2) 公正証書遺言の場合
公正証書遺言については、平成元年以降に作成されたものは、公証役場において一元的にデータ管理されており、全国のどの公証役場からでも公正証書遺言の有無を検索することが可能です(遺言検索システム)。
相続人が上記検索を行う場合は、被相続人の死亡の記載のある戸(除)籍謄本と相続人の戸籍謄本等を公証役場に提出する必要がありますが、遺言の検索自体は無料です(なお、相続が発生する前に、推定相続人が公正証書遺言の有無を検索することはできません。)。
検索結果に基づき公正証書遺言の謄本を取得する場合には、公正証書遺言が保管されている公証役場で手数料を支払って遺言書謄本の交付請求を行います。
(3) 自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言については、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が2020年7月10日に施行され、自筆証書遺言を法務局(法務局の支局および出張所、法務局の支局の出張所ならびに地方法務局およびその支局ならびにこれらの出張所を含みます。)がつかさどる遺言書保管所に保管することが可能となりました。自筆証書遺言についても、全国のどの法務局からでも自筆証書遺言の保管の有無を確認することができます。
相続人は、「遺言書保管事実証明書」の交付を請求することにより、特定の遺言者の自筆証書遺言が遺言書保管所に保管されているかどうかを確認することができます。
相続人が上記請求を行うに当たっては、被相続人の死亡の記載のある戸(除)籍謄本、相続人の住民票および戸籍謄本等を提出する必要があり、手数料は、証明書1通につき800円です。
自筆証書遺言が保管されていることが判明した場合には、「遺言書情報証明書」(遺言書の画像情報が全て印刷されているもの)を取得して、遺言内容を確認することになります(手数料は、証明書1通につき1,400円です。)。
(4) 保管制度を利用していない場合
上記保管制度が利用されていない場合、自筆証書遺言の有無を調査することは容易ではありません。
被相続人が日常的に重要書類をしまっていた場所や、貸金庫を利用していた場合には貸金庫の調査をするほか、顧問弁護士・税理士がいる場合には当該弁護士・税理士に預けていることも考えられますので、これらを念頭に可能な限りの調査を行うことになります。
石川貴敏(弁護士)
平成21年 弁護士登録(東京弁護士会)
〈編集〉
相川泰男(弁護士)
大畑敦子(弁護士)
横山宗祐(弁護士)
角田智美(弁護士)
山崎岳人(弁護士)