フランスの少子化対策が成功した理由は「移民と婚外子」
実は、フランスの出生率には移民の出生率の高さが大きく影響しています。2009年の出生率は2.00でしたが、非移民が1.91、移民が2.77でした。つまり、移民の出生率が全体の出生率を0.09高めていたのです※。
2014年のデータですが、マグレブ諸国(アルジェリア・チュニジア・モロッコなど)出身者の出生率は、3.5前後、マグレブ諸国以外のアフリカやトルコ出身者は3.0前後、それ以外の国・地域の出身者では2.0前後だったとされています。
もうひとつ、フランスの出生率を高めている要素があります。それは婚外子の割合が高いことです。フランスは2020年ではなんと62.2%にも上っています。つまり、結婚することが出産の前提となっていないのです。これらの2つが日本や韓国と大きく異なる点といえます。
現在行われている日本の参議院の予算委員会でも指摘されていることですが、日本の少子化の最大の原因は結婚しない人の割合(未婚率)の上昇なのです。この点と合わせて考えると、フランスで婚外子の割合が高いことは、大きな意味を持つと筆者は考えます。
なぜならば、日本と韓国は、世界的にも突出して婚外子の割合が低く、日本が2.4%、韓国が2.5%と、フランスとは大きく状況が異なっているからです。
このように出生率が高い移民が少ないことと、婚外子の率が低いことにより、日本でスタンダードな少子化対策は効果が期待できないのです。これらのことはあえて議論されてこなかった「不都合な真実」と筆者は考えています。
おそらく儒教の影響に加えて宗教的な保守の影響力が強いことで日本と韓国は共通しているのでしょう。このことを考えると岸田政権の「異次元の少子化対策」が韓国同様に失敗に終わってしまう可能性が高いかもしれません。
「異次元の少子化対策」が成功するためには
実は、韓国はすでにスタンダードな少子化対策では効果がないことが認識され、次の段階に移っています。企業や自治体が子供1人当たり1億ウォン(約1,130万円)を出産時に支給する制度が導入されたり、移民を促すためにビザの発給の権限を知事が持つ制度を進めたりしています。これらの制度がそれぞれ妥当かどうかは別にして議論は始めるべきだと思います。
また、韓国はまだ着手していませんが、結婚を出産の前提としない社会に転換するということも検討するべきだと思います。これらの政策は国民の生活に大きな変化をもたらすと同時に財政負担の観点から広い社会的なコンセンサスが必要だと思います。
いずれにしてもすでに失敗が明らかになっている韓国の事例を無視して、日本の少子化を解決するため真に「異次元な」議論を停滞させてはいけないと思います。
三木 雄信
元日本年金機構 理事
トライズ株式会社 代表取締役社長
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