「節税効果が高くて人気ですよ」の言葉に要注意…養老保険の福利厚生プランに潜む「落とし穴」【経営者専門FPが解説】

「節税効果が高くて人気ですよ」の言葉に要注意…養老保険の福利厚生プランに潜む「落とし穴」【経営者専門FPが解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

法人(企業)が従業員の退職金の準備として、養老保険の「福利厚生プラン」を活用することがあります。企業が受け取った満期保険金は従業員の退職金に充てられるとともに、条件を満たすと保険料の2分の1が経費として損金に算入されるという、法人側にとっての「税金面のメリット」もあります。しかし、導入の際にはさまざまな注意点があることを知っておく必要があります。本稿では、株式会社FPイノベーションの代表取締役・奥田雅也氏が、相談事例を基に注意すべきポイントを解説していきます。

保険屋がおすすめする「危ないプラン」に注意

これを聞いた理事長は、「確かにそうだね。目先の税金の効果だけを意識するとおかしなことになりそうなので、もう少し慎重に検討したほうが良いね」と言い、「実はすでに養老保険の見積りは作ってもらっていたんです」と某社の設計書を机の上に置きました。

 

許可をいただいて中身を見ると、「保険期間65歳満了・保険金額10万ドル」の特殊養老(リタイアメントインカム)だったので、思わず「あ~これ、一番危ないプランです」と言ってしまいました。

 

しかし、理事長は「この保険屋さんは『このプランは一番効果が高くて、人気でよく売れてます』って言ってたけど…」と怪訝そうでした。

 

そこで、先ほどの原則に合わせて、保険金額が途中から増えて2倍になる特殊養老は、保険金額が職員の年齢と死亡時期で異なるので福利厚生制度としては適さない上に、金額が大きすぎるのでさらに不適切であることを説明しました。

 

そして最後に、「この商品を使うのであれば、規定の作り込みと制度設計・商品設計は要注意ですし、逆にそこさえしっかりとやればよいとは思いますよ。ですので、採用される際はくれぐれも慎重にやってください」と伝えると、理事長は「じっくりと考えますね」と言い、相談はいったん終了しました。

 

その後、帰路について1時間もしないうちに理事長からメールが届きました。その内容は、「退職金制度は見送ることにした」というものでした。順調に規模を拡大している医療法人の経営者だけあって、意思決定の速さと思考の明晰さはさすがだと思いました。

 

養老保険を税金対策として活用することはめずらしいことではありませんが、筆者と理事長とのやりとりでもわかる通り、注意点が多々あります。それを理解した上で、活用するかの判断をすることをおすすめします。
 

 

奥田 雅也

株式会社FPイノベーション

代表取締役

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