トップダウンの企業ほど経営者は賃上げを躊躇する
こうした文化に拍車をかけているのがトップダウンの組織形態です。トップダウン経営では、トップが決めた戦略・計画を社員が実行するという構図で仕事を進めます。
このスタイルでは、業績が下がった時に社員の賃金を減らせば、社員から「社長が言った通りに頑張ったのに給料を減らされたら、たまったもんじゃない。私たちが責任を取るんですか?」と不満が噴出します。ただでさえ先行きが見えない時代なのに、この懸念がある以上、利益が出ても賃上げを躊躇してしまうのは無理のないことだと思います。
今は社会の成熟化が進み、生活者は十分なモノに満たされています。多くの生活者が「特に困ってはいないが、どこか満たされない」「もっと精神的に充実した生活を送りたい」と、生活者自身も正体が分からない欲求を持つようになりました。
当然、経営者にも正解が分かりません。そんな時代では、多様な知恵を活かす経営が求められます。これまで以上に、社員が経営計画の立案や商品開発、業務改善などの創造的な仕事に関与する「参画型経営」が求められます。
これが実現すると、社員の、業績への影響力が高まりますので、賃金はこれまでよりも業績に連動するようになります。そうなると、経営者の賃上げへの抵抗は軽減されますが、同時に付加価値を高め、社員の賃金を仕事に見合う額に改善する必要があります。
賃上げを機に参画型経営へ転換するよう促し、上記のシナリオを全社的に推し進めるのです。
当然、社員教育を充実させる必要がありますが、育つほどに、経営者が1人で抱え込む孤独から解放され、利益の分配への意欲が高まるでしょう。
業績に連動した賃金制度を整備する
賃上げへの不安を軽減するとともに、賃上げを機に参画型経営を促すためには、業績と賃金に連動性を持たせることが欠かせません。
中小企業の多くは、賃金の根拠が曖昧で、社員はどれだけの業績を出せばどのくらい賃金が増えるかが見えません。
前述しましたが、賃金は売上総利益に連動しています。連動性を活用すると、組織の稼ぐ力を高める戦略的な賃上げが可能になります。
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