優しさよりも冷たくあたるほうが親の自立には有効
そうそう、昔僕の友人が脊髄を損傷して入院したとき、最初の1週間は喜んでいたのです。「やさしい看護師さんがごはんを食べさせてくれて、トイレもさせてくれるんだよ」と自慢げだった。ところが1ヶ月後、また見舞いに行くと、どうも落ち込んでいる。どうしたのか聞いてみると、「自分でごはんを食べて、自分でトイレに行けることがこんなにありがたいことだとは思わなかった」と肩を落として言うのです。
最低限、自分の生命を維持する活動に自分で責任を持てること。これが人間の尊厳なのだとしみじみ感じました。自分で食べられて、自分でトイレに行けて、自立して生活できる期間が「健康寿命」です。
自分の親に彼と同じような気持ちを味わわせないために、健康寿命を延ばしてあげるのが子の務めというもの。ただ生物として「生きる」のではなく「楽しく暮らす」ためには、健康寿命が大切ですからね。
恐ろしい話ですが、平均寿命と健康寿命とでは、すでに10年前後の開きがあります。つまり、介護期間が10年にもわたるということです。そして、健康寿命を延ばすためには、働いて、少額であっても自分で稼いで、規則正しい生活を送って、社会とつながりを持ってもらうしかありません。
ジョークですが、「『お母さんは私が引き取って一生面倒を見るわ。もう安心していいよ』と娘に言われた途端、認知症になる準備が整う」と言われることがあります。親にそうなってほしくないのであれば、将来の介護の話になったとき、「自分にはそんな余裕はないから一銭も払えない。アテにしないでほしい」と、冷たくあたるくらいがちょうどいいのでしょうね。
出口 治明
立命館アジア太平洋大学 学長特命補佐/ライフネット生命保険株式会社創業者
※本記事は『働く君に伝えたい「お金」の教養』(ポプラ社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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