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【“プロ”に聞く!ベトナム経済】
「ベトナム景気の2024年の見通しは?」
⇒輸出や生産が底打ちし、景気は回復へ。政府の景気支援策や海外からの直接投資も後押し。
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月次経済指標は底打ちを示唆
●ベトナム景気は底打ちし、回復に向かいつつあります。11月の米ドル建て輸出は前年同月比+6.7%と、8月の同▲6.5%を底に、緩やかに加速しています。財輸出のGDP比率が高いベトナムでは財輸出の持ち直しは景気をけん引しやすくします。実際、鉱工業生産は9月の同+2.9%を底に11月には同+5.8%へ緩やかに加速しました。消費者物価上昇率は11月に同+3.4%と低位で安定しており、小売売上高は7~10月に同+7%台で推移していましたが、11月は同+10.1%へ加速しました。ベトナム経済にとって懸案だった7-9月期の社債大量償還を乗り越えたことから、景気持ち直しがより明確になってきたとみられます。
政府は2024年の景気回復を目指す
●ベトナム国会は11月9日に、2024年の実質GDP成長率の政府目標を6.0~6.5%と決定しました。ベトナム政府は2023年の成長率が5%を超えるものの目標の6.5%を下回る見込みだと認識しており、2024年に向けて景気回復を目指していることがわかります。また、ベトナム国会は11月29日に、付加価値税(VAT)税率の引き下げ(10%から8%へ2%ポイント引き下げ)を2023年末から2024年6月末まで延長することを決定しました。海外景気や不動産市場の不透明感が残るなか、今後もベトナム政府は景気下支えのため景気対策を講じるとみられます。
中長期的に中国デカップリングの恩恵
●米中対立が激化する環境下で、外国企業は安全保障の視点から中国への進出に二の足を踏むようになっています。7-9月期には海外から中国への直接投資流入額は初めて減少しました。つまり、新規の流入額より引き揚げ額の方が大きくなったわけです。一方、中国から海外への直接投資は増加傾向にあります。つまり、中国企業が積極的に海外に進出していることを示唆しています。海外からベトナムへの月次直接投資をみると、中国からの増加傾向が明確で、これまでベトナムに積極的に進出してきた韓国を追い抜く勢いです。このように、中国へのデカップリング(分断)の影響は、ベトナムの直接投資にプラスに作用しています。中長期的にもベトナム経済はこの恩恵を受けやすいと言えるでしょう。
(2023年12月20日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『景気回復に向かう「ベトナム経済」、2024年の見通しは?【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。