年収が高くてもなぜかカツカツの家計で暮らしている人たちがいます。一体なぜそのような事態となってしまうのでしょうか。なかには、放置しておくと家計破綻に陥るような深刻な問題を抱えている人もいて……。本記事ではAさんの事例とともに、買い物依存症の恐ろしさについて長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
猛省しています…年収1,500万円の47歳内科医、エリート勝ち組人生のはずが「愛する子の教育費」も支払えない惨め【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

Aさんの重度な買い物依存症が発覚

Aさんが抱える問題が次第に見えてきました。

 

Aさんの自宅が完成し引き渡されてから半年後、大手ハウスメーカーの展示場にAさんの姿があったのです。なんと営業マンと「商談」をしているようです。担当している若い営業マンはAさんが半年前に住宅を購入したことは知りません。Aさんの職業を聞き、舞い上がっています。高所得者と商談ができると住宅営業マンは誰しも喜ぶものです。

 

「次回は住宅ローンの事前審査をすることになっています」と営業マンが言うのですが、個人情報の問題があるためFPからAさんの事実を告げることはしませんでした。さすがに引き渡し後半年で住み替えるのは無謀だし、銀行の審査も通らないでしょう。

 

Aさんと妻Bさんとは、毎月家計簿のつけ方をレッスンし、家計収支の報告を受けるために面談を繰り返していたのですが、その場で、Aさんからさらにショッキングなことを耳にします。

 

「この半年で2度、自動車を買い替えたんです」

 

「なにか車に問題があったのですか?」とFPが訊くと、Aさんは小さな声で答えます。

 

「半年前は、腰が痛くてドイツ車に買い替えました。先日は輸入車は故障が多いので、日本車にまた替えたんです。いまはなぜまた買ってしまったのかと猛省しています……」

 

貯蓄がゼロであるため、それらは自動車ローンで購入したことになります。しかもおそらく残債を上乗せしてローンを借り換えたのでしょう。いま所有している自動車の価格に見合わない大きなローンを返済しているということです。

 

妻Bさんにも話を訊いていくと、この10年間で購入したのは10台。すべて新車です。一度だけ事故で廃車にしたことがあり、自動車保険でローンが完済されたのが救いですが、これではいくら働いても貯金はできません。夫のAさんは猛省していると言いながらも、いまも「家の住み替え」を再び目論んでいるようでした。

 

ハウスメーカーの展示場、自動車ディーラーのショールームを休みのたびに回遊するような生活だと妻から聞き、FPは驚きを隠せません。それについて家族としてどう考えているのか質問したところ、「お金を稼いでいるのは夫だから好きにしていいと思います」という回答でした。

 

買い物依存という症状が出ているのではと疑い、FPがそう指摘しても夫婦ともに聴く耳は持ちません。自宅リビングに大量に置かれた自動車のパンフレットに恐怖すら感じます。