人口は減少も、続々建設されるタワーマンション
近年「タワーマンション」が全国に建設され続けています。不動産調査会社の東京カンテイによると、全国のタワーマンションの棟数は2023年12月末時点で1,515棟とされています。タワーマンションがない都道府県は、青森県、石川県、三重県、奈良県、鳥取県、島根県、徳島県、大分県、宮崎県の9県のみ。このうち青森県、大分県、宮崎県にはすでに建設計画があります。いずれすべての都道府県にタワーマンションが存在するようになるのかもしれません。
タワーマンションとは一般的に、「地上20階以上、高さ60m以上」の高層マンションの通称です。東京都心であれば50階建て、総戸数が1,000戸を超えるものまであります。このような大規模なタワーマンションが一棟建つことで、本来は狭いはずの土地に数千人の人口が増えるということになります。たとえば富山県新川郡にある舟橋村は人口3,304人です。この人口が標準的なタワーマンションのわずか3棟分に匹敵すると考えると、タワーマンション建設による経済効果がいかに大きなものか想像できると思います。
地方都市においてタワーマンションは駅前に建てられていることが多く、購入者は「資産価値」「リセールバリュー」を期待しているようです。さらにはタワーマンション=富裕層、というステイタス性も期待しています。
しかしそれらは、人口が増え続けることが前提の理屈です。2024年現在、人口が前年よりも増えた都道府県は、東京都、千葉県、沖縄県のみ。その他はすべて人口減社会となっています。団塊世代は相続のときを迎えつつあり、またその子供の団塊ジュニア世代もまた30年ほどで相続のときを迎えます。この先30年で人口ボリュームの多い世代がふたつ消滅してしまうのです。人口が激減していくことが予想されている地域において、タワーマンションは「ひとときの儚い夢」となるかもしれません。人口減少社会でのタワーマンションは、将来「廃墟」「スラム」と化していく危険があり、都市計画としても冷静に考えていく必要があります。