深刻化する人手不足
背景にあるのは、物価動向と人手不足です。帝国データバンク「2023年度の賃金動向に関する企業の意識調査」によると、物価動向を賃上げ理由に挙げる企業が急増しています。
賃上げを行う意向のある企業のうち、57.5%が物価動向を理由に挙げており、その割合は2022年度の21.8%から大幅に上昇しています。また、7割の企業が「従業員の生活を支えるため」を理由に挙げています。インフレが加速する中で、賃金を上げることが求められている様子がわかります。
同調査では、賃上げ理由として「労働力の定着、確保」を挙げる企業の割合が最も高い71.9%となっています。これは、賃金を高くしないと人が集まりにくい状況になっていることを示しています。
企業の人手不足感が一段と強まっていることは、日本銀行の「企業短期経済観測調査(短観)」からもわかります(図表2)。
短観は日本銀行が3か月ごとに行っている調査で、企業の雇用人員の過不足を示す雇用人員判断指数を公表しています。これは、従業員の数が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を差し引いたもので、マイナスが大きくなるほど人手不足だと感じる企業が多いことを示します。
2023年6月の短観では、製造業でマイナス20、非製造業ではマイナス40となっており、コロナ禍直前の2019年12月の数字とほぼ同じになっており、企業の人手不足感が一段と強まっていることがうかがえます。
また、日本商工会議所の調査によれば、中小企業の64.9%が人手不足を認識しています。コロナ禍で「人手が不足している」と回答した企業の割合は一時低下しましたが、過去最高だった2019年調査の66.4%に迫る勢いで再び人手不足の状況となっています。
業種別では、建設業、運輸業、宿泊・飲食業で7割を超える企業が人手不足を認識しています。そして、求職者に対して魅力ある企業・職場となるための取り組みとして、6割弱の企業が「賃上げの実施や募集賃金の引き上げ」を挙げ、最も多くなっています。
人手不足は企業の倒産にも影響を与えています。帝国データバンクによると、2022年には人手不足が原因の倒産が前年比26%増加しました(図表3)。
増加は3年ぶりで、倒産件数全体の増加率(6%)よりも大きいという事実が、人手不足の深刻さを物語っています。
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