全国のホームレス数は、景気回復と自立の支援対策で大きく減少
~全国のホームレス数は3,065人(23年1月調査)。20年前の8分の1弱に
全国の市区町村が巡回による目視でホームレスの人数を調べ、厚生労働省が集計した「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、全国のホームレスは23年1月時点で3,065人でした。
03年に厚生労働省が初めてこの調査を実施して以降、ホームレスの人数は「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」および「生活困窮者自立支援法」に基づく支援などの取組の成果により、減少傾向にあります(図表1)。
また、最近のホームレスの動向やそれを取り巻く環境の変化等を踏まえ、23年7月31日には、新たなホームレスの自立の支援等に関する基本方針が策定されています。
「ホームレスの実態に関する全国調査」は最初の調査から4年後の07年に2回目が実施され、以後毎年1月に実施されています。自治体の自立支援策の効果もあり、07年では4年前から6,732人減と約▲27%減少しました。その後、リーマンショックの影響で09年までの減少テンポは鈍った感じがありましたが、10年以降は景気の持ち直しもあり、順調に23年まで減少してきました。最初の調査から20年後の23年には8分の1弱まで減少しました。
ホームレスの分布状況
~大半は大都市で生活。起居する場所は「都市公園、河川、道路」の順だがほぼ同じ割合
23年1月「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、なお、全国のホームレスの中で、東京23区(国管理河川〔国土交通省調査〕を含む)及び政令指定都市の割合は79%になります。このようにホームレスの多くは大都市で生活しています(図表2)。
ホームレスが確認された場所の割合は、「都市公園」25%、「河川」24%、「道路」22%、「駅舎」6%、「その他施設」23%となっています。「都市公園」、「河川」、「道路」の順ですが、概ね同じ割合と言えます(図表3)。
東京23区のホームレス数は「減少傾向」継続
~過去「5,000人台」の時期もあったが、23年8月は385人(国土交通省調査を除く)
古くからデータがある東京23区のホームレスのデータである23年8月「路上生活者概数調査」が判明しました。東京都福祉局(2023年6月までは福祉保健局)によるこの目視の調査は、年に2回、冬期・1月(07年までは2月)と夏期・8月に行われています。なお、ホームレスの人数は夏期の方が冬期より若干多くなる傾向があります。
23年8月の東京都のホームレスは、都・区市町村の調査による人数が402人(区385人、市町村17人)、国管理河川(国土交通省調査)が243人、東京都の合計で645人でした。
東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレスのデータで長期的な推移をみると、バブル景気崩壊により最初の調査である95年から過去最高の99年8月の5,798人まで増加しました。その後04年8月まで5,000人台の高水準で推移した後で減少に転じ、23年1月は384人、23年8月は385人とピークの約15分の1まで低下してきました。
かつて5%台の高水準だった完全失業率が、現在2%台半ばまで低下していることに示唆されている雇用環境の改善が、近年のホームレスの減少につながっていると思われます。
※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。 さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。 23年4月からフリー。景気探検家として活動。 現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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