公的年金の将来に対する不安が叫ばれて久しいです。なかには年金制度が崩壊するという説までもありますが、年金だけで十分な老後資金を得られるわけではないというのが現実です。本記事では、公的年金の仕組みとともに、30代の人が老後のために第2の年金を作る方法を解説します。
年金だけでは暮らせないだろう…30代がいまから毎月プラス7~8万円の「第2の年金」を準備する方法 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金制度が崩壊しない3つの理由

[図表2]公的年金制度が破綻しない理由

 

公的年金制度の「崩壊説」は依然として根強いものがありますが、これらは誤りです。年金制度が崩壊しないことには主に3つの理由があり、これらの根拠が崩れない限り年金制度は維持することができます。年金制度が崩壊しない3つの理由について、それぞれ解説していきましょう。

 

1.マクロ経済スライドによる調整が可能

公的年金は、マクロ経済スライドという仕組みを採用しています。これは平成16年(2004年)に導入されたもので、それぞれの時代の経済情勢を踏まえて受給額が変動するようにできています。

 

現役世代の負担が重くなりすぎないよう、最終的な負担額の水準を決めたうえで支給が可能な額を決めます。このマクロ経済スライドがある限り、現役世代の負担が一定以上になることはありません。

 

しかし、その一方で年金受給者の受給額はマクロ経済スライドによって減る可能性があります。少子化によって現役世代の人数が減る一方で高齢者が増える社会が到来すると、その可能性は現実になるでしょう。

 

つまり、マクロ経済スライドがあるおかげで公的年金の受給額が減ることはあっても、年金制度そのものが崩壊することはありません。

 

年金積立金が潤沢にある

公的年金はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用しています。あまり知られていませんが、このGPIFによる年金運用は好調で、2023年第1四半期は9.49%の資産増に成功しています。金額にして約19兆円程度の年金資金が増えたことになります。市場運用を始めてからの合計でも3.97%の運用成績を収めており、着実に運用資金は増えています。

 

また、年金積立金は100年計画で運用されています。今後100年間で年金財政が均衡になるように設計されており、端的にいえば今後100年間は制度崩壊しないだけの資金があるということです。好調な運用を維持している以上、100年よりも長い期間にわたって年金積立金が潤沢である可能性は高いでしょう。

 

このように年金は資金がとても潤沢なので、どれだけ運用がうまくいかなかったとしても「数十年以内に崩壊」という論調が不正確であることが分かります。

 

参考:GPIF2023年度の運用状況

 

高齢化が進んでも、就労者と非就労者の割合はあまり変わらない

賦課方式の公的年金では、現役世代の就労者数がどれだけいるかが重要なポイントです。就労者を非就労者が大きく上回ると年金の負担が重くなりますが、就労者の人数が増えると1人あたりの負担は軽くなります。

 

少子高齢化によって就労者は減っていくと考えるのが普通ですが、実際には定年退職の年齢が高くなったり、高齢になっても働く人が増えているなどの理由から、就労者と非就労者の比率はそれほど大きく変化していません。しかも近年では女性の社会進出も目覚ましく、就労者数だけが今後急激に減ってしまうことは考えにくい状況です。

 

この構図が維持される限り、公的年金が急速に不安定化することはないでしょう。