不動産投資の成否は物件選びで決まる、といわれています。物件選びの1つの基準として「利回り」があげられますが、利回りが高いだけではいい物件とはいえない場合もあり……。では、投資に成功できるのはどのような物件なのでしょうか。本記事では、不動産投資用物件の選びの注意点について解説します。
利回りが高ければいいとは限らない⁉ 「稼げる不動産投資用物件」が満たす条件、3つ (※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資の利回りとは?

不動産投資の物件選びに欠かせない重要指標、利回りには大きくわけて2つの種類があります。1つは表面利回り、もう1つは実質利回りです。それぞれ個別に解説しましょう。

 

投資物件の表面利回り

表面利回りとは、「グロス利回り」とも呼ばれる指標です。投資物件を購入した時の金額に対してどれだけの家賃収入が得られるのかを知るための指標で、以下の計算式で求めることができます。

 

年間の家賃収入(万円)÷物件購入価格(万円)×100=表面利回り(%)

 

たとえば3,000万円で購入した物件で毎月8万円の家賃収入が得られている投資物件の表面利回りは、以下のように求めます。

 

(8万円×12ヵ月)÷3,000万円×100=3.2%

 

この物件の表面利回りは、3.2%です。

 

投資物件の実質利回り

表面利回りの次に知っておきたいのは、実質利回り(ネット利回り)です。不動産投資ではさまざまなコストや税金などが発生します。

 

これらを考慮しないことには実際の不動産投資の姿は見えてこないので、実際の投資判断をする際には家賃収入からコストを差し引いた金額を物件購入価格で割って、実質利回りを求めます。計算式は、以下のとおりです。

 

(年間の家賃収入-年間の運営コスト)÷物件購入価格(万円)×100=実質利回り(%)

 

それでは、先ほどの3,000万円の物件についても実質利回りを計算してみましょう。毎月8万円の家賃収入に対して2万円の運営コストがかかっていると想定してみます。

 

((8万円-2万円)×12ヵ月)÷3,000万円×100=2.4%

 

先ほどと同条件の物件で、実質利回りは2.4%となりました。

都市ごとのワンルームマンションの利回り相場

先ほど、ある想定条件で利回りを計算しました。これから購入する投資物件の選定をする際にも、さまざまな投資物件に出会うことでしょう。そこで提示されている利回りが果たして相場と比較してどうなのかを判断するためには、相場観を掴んでおく必要があります。

 

ここでは、一般社団法人日本不動産研究所の「第47回不動産投資家調査」のデータ(2022年10月)を用いて、投資用マンション物件の利回り相場を紹介します。不動産投資で人気の高い、ワンルームマンションの期待利回りを見てみましょう。

 

[図表1]都市ごとのワンルームマンションの期待利回り

 

このデータは賃貸住宅一棟物件の平均値なので、区分マンションとは少し異なる可能性があります。あくまでも利回り相場の目安として参考にしてください。

 

利回りの高い投資物件には注意も必要

利回りは投資した金額に対して「稼ぐ力」を示しているので、高いほうがいいと思いがちです。しかし、実際にはそれだけで判断するのは早計です。その理由は、利回りの計算方法にあります。

 

利回りは年間の家賃収入を物件の購入価格で割って求めます。分子にあたる家賃収入が増加することによって利回りが向上するのは悪いことではありませんが、分母である物件の購入価格が安くなることでも計算結果は高くなります。

 

先ほど紹介した全国主要都市の利回り相場を見ると、東京だけが3%台で、京阪神や横浜、名古屋などが4%台です。そして札幌や仙台、広島が5%台です。このように大都市ほど利回りが低くなるのは、物件価格が高いことも理由の1つです。

 

逆に物件価格が安いと利回りは高くなるため、「利回りが高すぎる物件」は、「物件価格が安すぎる物件」の可能性があります。安すぎる物件には、必ず理由があります。

 

立地条件が悪い、そもそも賃貸需要のないエリア、とても古い建物であるなど、こうした物件はいくら期待利回りが高くても入居者が付きにくく、購入してはいけない物件の一種です。利回りの高さだけで安易に飛びつかないように注意しましょう。