「1ドル=360円」の固定相場だった時代と同レベルの購買力しかない…「安いニッポン」の根本原因【元IMFエコノミストが解説】

「1ドル=360円」の固定相場だった時代と同レベルの購買力しかない…「安いニッポン」の根本原因【元IMFエコノミストが解説】
※画像はイメージです/PIXTA

各国のビッグマックの価格を比較することで、それぞれの国の「購買力」を把握することができます。日本のビッグマックの価格から読み取れる「円」の価値は、どのようなものなのでしょうか。本記事では、元IMF(国際通貨基金)エコノミストで東京都立大学経済経営学部教授の宮本弘曉氏による著書『一人負けニッポンの勝機 世界インフレと日本の未来』(ウェッジ社)から、日本経済の実情について解説します。

ラーメン1杯2,210円…アメリカと日本の埋まらない差

例えば、米アマゾン・ドット・コムの会員制サービス「アマゾンプライム」の年間費用は日本では4,900円ですが、米国では139ドル、英国では95ポンド、ドイツでは89.90ユーロとなっています。

 

為替レートを1ドル=130円とすると、アメリカの年会費は1万8,070円になり、日本の年会費はアメリカのほぼ3割に過ぎません。

 

また、日本のラーメン店チェーン「一風堂」はアメリカでも人気を博していますが、価格にはかなり差があります。日本国内では、ラーメン一杯790円で提供されていますが、米国では17ドルという価格がつけられています。

 

1ドル=130円で計算すると、アメリカでの一杯当たりの価格は2,210円になります。

 

さらに、世界中で大人気のディズニーランドの入場料も、日本と他国では大きな違いが見られます。東京ディズニーランドは、2021年10月1日に値上げが行われ、大人の入場料が7,900円から9,400円に変更されました。

 

入場料が高くなったと感じられる人も多いのではないかと思いますが、アメリカフロリダの1日券は109〜189ドルで、1ドル=130円換算で1万4,170円〜2万4,570円になります。

 

安いニッポンをもたらした根本原因

アマゾンプライムの価格がアメリカで日本の3倍以上、一風堂のラーメン価格が2.8倍といった、日本と海外の価格差は為替レートの動きだけで説明がつくものではありません。それぞれの国での物価の動きも重要な要素となります。

 

例えば、日本と海外で物価上昇率が同じであれば、国内物価が海外物価よりも安くなったのは円安が理由と言えます。

 

しかし、現実は異なります。日本は長期デフレで物価が停滞している一方で、他の先進国では毎年平均2%近く物価が上昇していました。

 

2000年とコロナ禍直前の2019年の物価水準を比較すると、この20年間で日本の物価はわずか3%しか上昇していないのに対し、アメリカでは1.5倍にまで跳ね上がっています。

 

日本が海外に比べて安い国になったのは、昨日今日の話ではありません。むしろ、日本は長い期間にわたって安価になってきたのです。直前の円安だけで説明できるものではなく、長年にわたる日本と海外の物価上昇率の差が、安いニッポンをもたらしたのです。

 

そして、その根因には日本経済の体力が落ちていることがあります。

 

経済が長期デフレで停滞した結果、国民の所得が伸びず、消費意欲が失われました。企業が少しでも値上げをすると、消費者は手を引く傾向がありました。顧客を獲得するため、コスト削減による値下げ競争も起きました。

 

この状況が、消費者のデフレマインドを強化し、値上げに対して拒否反応を示す消費者が増え、企業はますます値上げができない状況に陥りました。一方で、海外では物価が上昇し続けたことから、日本の購買力が大幅に低下し、安いニッポンになったのです。

 

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一人負けニッポンの勝機

一人負けニッポンの勝機

宮本 弘曉

ウェッジ社

「働いても働いても貧乏から抜け出せない!?」…経済大国ニッポンが賃上げもままならない「一億総貧国」に転落した根本原因とは? 2023年、年明け早々、食料品の3度目の値上げの報道がなされ、物価高騰が生活者レベルで重くの…

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