海外不動産投資で検討すべき重要事項
大半の日本人投資家は、海外不動産に投資する際、手持ちの円を現地通貨に替えて投資することになるでしょう。その点、現在、2年ぶりの円高となり、絶好の投資機会が到来していると言えるのではないでしょうか?
今回は、投資を実行するタイミングでの為替レートが、投資のパフォーマンスに極めて大きな影響を与える点について、説明したいと思います。
海外不動産投資において、検討すべき重要な事項はいくつもあります。
例えば、
・どの国の不動産を買うのか?
→海外の不動産に投資することは、その国の通貨に投資することになるからです。
・誰から買うのか、誰がつくったものか?
→建設途中や取得後のトラブルを解決するとき、結局、拠り所になるのは、彼らの資力や能力しかありません。
・購入後の管理は大丈夫か?
→運営管理上の諸問題について、長期にわたり相談する相手は彼らになります。頼りにならないパートナーでは致命傷になりかねません。
・税制面は?
→税金を払った後の利益こそが、投資家が得る本当の利益だからです。
投資のベストタイミングである円高状況
海外不動産投資を行ううえで、上記の事項は、いずれも決して軽視できない重要なポイントですが、それらと同等、もしくは他の選択肢をとり得ないという点ではそれら以上に、投資収益に直接影響を与えるのが、投資を行うときの為替レートです。
投資を行うタイミングでの為替レート次第で、円換算後の投資収益に大きな差異が生まれます。
簡単なシミュレーションを用いて、その点を再確認したいと思います。
まず、下記の表(シミュレーション1と2)をご覧ください。
前提として、10%のネット利回りが期待できる米国の賃貸不動産を50 万ドルで購入するとしましょう。
シミュレーション1は、取得時のドル円の為替レートが101円で、総投資額5050万円で投資します。一方、シミュレーション2は、為替レート112円で総投資額5600万円で投資したケースです。
かりに、10 年間の利回りは一定で、為替レートは1年目に円高(98円)に進んだ後、2年目の101円から10年目の109円まで、毎年1円ずつ円安が進んだとします。今年の春までの為替レートが、110円台、120円台であったことを考えますと、110円未満の水準では、変動幅は小さ過ぎるかもしれませんが・・・。
(注:ここでのシミュレーションは、為替レートの影響を分かりやすくするため、税金その他のコストは考慮していません。以下のシミュレーションも同様です。)
結果は、取得後の為替レートが円安に振れたため、円換算ベースでの利益は、シミュレーション1の場合、初期投資額(5050万円)を上回り、約200万円の超過利益を得ました。一方、シミュレーション2の場合は、10年間の保有運用期間で、初期投資額(5600万円)を回収することができません。
円換算ベースで考えた場合、円高時に投資することは総投資額を相対的に低額にし、保有運用期間中に円安に進めば、投資効率がアップします。
シミュレーション1と2の比較からひとつ言えることは、いま円高で将来円安に向かうと考えるなら、ドル資産に投資するのは合理的な判断ということです。
円高時の海外不動産投資は為替変動のリスクバッファー
次に、取得時の為替レートは101 円、保有運用期間中の為替レートが1年目と2年目に円高(90円)で進んだ後、毎年10 円ずつ為替レートが90円から120円までの間を上下に変動する場合(シミュレーション3)を確認したいと思います。
それ以外の条件は、シミュレーション1・2と同じとします。
シミュレーション3の結果は、初期投資額(5050万円)を上回り、50万円の超過利益を得ました。
取得時の為替レートが円高の水準にあるとき、為替相場がその後変動しても、長期の運用期間を前提にすれば、円換算ベースの平均パフォーマンスは相対的に魅力的な水準を維持します。
シミュレーション3から言えることは、円高時に投資すれば、円換算ベースの投資収益は、その後の為替変動を吸収でき、為替変動リスクのバッファーとしての働きが期待できるということです。
リスクバッファーとしての機能は、投資したときの円高の水準によって、当然限界がありますが、海外資産を保有する限り、為替変動は避けて通れないリスクですので、海外資産に投資することを決めているのであれば、円高時に投資することは合理的な判断なのです。
利回り低下のリスクバッファーにもなる円高時の投資
最後に、ネット利回りが低下してしまう場合のシミュレーションを見てみましょう。
シミュレーション4は、取得時の為替レートは101円、保有運用期間中の為替レートは10 年通じて、110円と120円の間を上下に変動するとします。ネット利回りは、当初の3年間は10%、4年後から9%、7年後から8%、10 年目に7%と段階的に低下するものとします。
一方、シミュレーション5は、取得時の為替レートが112 円、それ以外の条件は、シミュレーション4と同じとします。
シミュレーション4の結果は、米ドルベースでは初期投資額(50万ドル)を下回りましたが、円換算ベースでは初期投資額(5050万円)を上回る超過利益を得ました。一方、シミュレーション5では、ドルベースでも、円換算ベース(5600万円)でも、10年間の保有運用期間では初期投資額を回収することはできません。
取得時の為替レートが円高の水準にあるとき、投資利回りが低下しても、将来円安に振れることを前提にすると、円換算ベースの平均パフォーマンスは相対的に魅力的な水準を維持します。
シミュレーション4と5の比較から言えることは、円高時に投資すれば、かりに利回りが低下したとしても、円換算ベースの投資収益は、その後の円安の恩恵をうけて、利回り低下リスクのバッファーとしての働きが期待できるということです。
上記5つのシミュレーションでは、保有資産の売却を考慮していませんが、円高時に投資した物件を、円安時に売却することで、円換算ベースで考えた場合、売却収益は為替の差益分の増加が期待できます。このことは、売却時の価格面について、より柔軟な対応を可能にし、それだけ有利な売却活動を進めることができるのです。
海外不動産投資のパフォーマンスを円換算ベースで考えた場合、投資対象がどんなに素晴らしいものであっても、円安時の投資では、円高に振れた時に為替の差損分だけ、賃料収入や売却益が目減りしてしまいます。
海外不動産を円高時に投資することで、投資収益をより安定させることができるのです。
次回は、米国フロリダ州オーランドの「バケーションレンタルホーム」の話題に戻り、バケーションステイに特化したインテリア・プランについて、説明したいと思います。