(※写真はイメージです/PIXTA)

少子高齢化が進むなか、昨今では高級志向の老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)といった選択肢が増え、老後の住まいが多様化しています。終の棲家に選ぶ人も多いなか、一方で入居後に後悔したというケースも……。本記事では、FP1級の川淵ゆかり氏が、サ高住へ入居したAさん(72歳)の事例とともに、高齢者施設への入居の注意点について解説します。

5日間の体験入居に満足し、入居を決めたAさん

さて、Aさんは5日間の体験入居をしましたが、スタッフもとても優しく、食事もバランスが取れておりおいしかったため、不満を感じることはありませんでした。庭では花や野菜を作っており、自宅で野菜作りをしていたAさんも楽しめそうです。

 

さらに説明を受けると、自宅にいるように自由に過ごせて、外出も自由で門限もない、ということでした。Aさんはいままでどおりに俳句の集まりにも電車に乗って出かけられることがわかり、入居することを決めました。

 

Aさんが入居するサービス付き高齢者向け住宅は、入居一時金も20万円ほどですみ、月額費用も約18万円と年金月額からは3万円ほどオーバーしますが、夫が残してくれた保険金や預貯金で賄えますし、いざとなれば息子達から援助も受けることもできるため、お金の不安もありませんでした。

入居から3ヵ月後に起きた逃亡事件

さて、入居から3ヵ月を過ぎたころ、新しい環境での生活も慣れたように思われたAさんですが、ある日、Aさんの長男のところへ施設から1本の電話がかかってきました。聞けば、Aさんが急に施設を飛び出したきり戻ってこない、というのです。驚いた長男は、そのときの様子をスタッフに詳しく問うと、事の次第をスタッフから告げられました。

 

Aさんはお昼を食べ終わったころ、「もうここにはいられない」と言い残し、急に施設を出ていこうとしたそうです。慌ててスタッフが止めようとしたそうですが、タクシーに乗ってそのままどこかへ行ってしまった、という次第でした。

 

長男は慌てて何件か知り合いのところへ電話をかけるのですが、Aさんの行方はわかりません。

 

仕方なく会社を早退し、都会から遠く離れた地方まで母親を探しに出た長男ですが、「まさか」と思い、立ち寄った実家で寝ている母親を見つけてびっくりします。

 

自分の殻に閉じこもっているのか、なかなか理由を明かさない母に、長男はゆっくりと話を聞きます。

 

母も次第に落ち着いたのか、ゆっくりと口を開きます。

 

「実は、最近認知症の人が立て続けに入居してきて雰囲気が変わってしまって……。もういたくない」

 

なにかトラブルがあったのかと問いただしても、そこからは「ここがいい」の一点張りです。

 

Aさんの長男は、そろそろ実家を売却しようか、と考えていた矢先のことで「これじゃ、しばらく売りにだせないな」と思うとともに「この遠距離をなにかある度に呼び出されたんじゃたまらないな」とも思い、改めて老親を抱えることの大変さを思い知るのでした。

 

2025年には認知症高齢者が「5人に1人」に…

日本の認知症患者は年々増えており、内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によれば、2025年には認知症高齢者は、約5人に1人になるとの推計もあります。

 

内閣府「平成29年版高齢社会白書」より引用
[図表1]認知症患者数の推移 内閣府「平成29年版高齢社会白書」より引用

 

グループホーム等のような認知症の高齢者を受け入れる施設が不足してきており、サービス付き高齢者住宅でも認知症の高齢者を受け入れるようになってきています。そうなると、認知症患者と患っていない高齢者がともに生活しなければならなくなり、患者間でいろいろなトラブルが発生することが考えられます。

 

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