(※画像はイメージです/PIXTA)

政府が提唱する「資産所得倍増計画」の一環として、2024年1月から新しい「NISA」の制度が施行される。従来より著しく拡充され、老後資金等を効率よく準備するために使い勝手のよい制度になるとされている。しかし、非正規雇用で働く人が多い「就職氷河期制度」は依然として厳しい状況に置かれている。NISA拡充の陰でどのようなことが起きているのか、解説する。

非正規雇用の就職氷河期世代にとって新NISAは過酷な制度?

その観点からすると、新しいNISAは、とりわけ、非正規雇用で働く人が多い「就職氷河期世代」の人々にとっては過酷な制度というべきかもしれない。

 

厚生労働省の「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」の結果によると、40代~50代の非正規雇用労働者の平均月収は以下の通りである。

 

・40歳~44歳:21万7,600円

・45歳~49歳:21万2,800円

・50歳~54歳:21万1,900円

・55歳~59歳:21万6,700円

 

月収21万円台は、手取りにすると月16万円程度である。物価高騰が続くなか、家賃、食費、水光熱費、日用品費等を差し引くと、残る額は限られる。そのわずかな金額も、直ちに投資に振り向けることは難しい。いざというときに備え、多少の現金は確保しておかなければならないからである。

 

NISAの制度、特に少額ずつ投資する「つみたて投資枠」は、「長期・分散・積立」を前提としている。つまり、毎月一定額ずつ、短期的な騰落を一切気にせず、淡々と長期にわたって投資を続けることで、リスクが抑えられ、最終的にお金が増える可能性が高くなるという経験則に基づくものである。

 

裏を返せば、何らかの事情によって短期で引き出すことになると、損をする可能性がある。また、投資したお金は長期間にわたって拘束されることになる。食べていくのに精いっぱいという状況では、いかに新しいNISAの使い勝手が優れているといっても、事実上、投資に回すお金を捻出することは難しい。たとえ月数千円でも、躊躇するかもしれない。

 

しかも、就職氷河期世代に属する人のなかには、就業機会やスキルを身に付ける機会に恵まれなかった人も多く、そのような場合は大幅な収入増加も難しい。

老後資金の問題に加え「親の介護」の問題も…

日本の公的年金制度は、現役世代が高齢世代を支える構造になっている。少子高齢化が進行すれば、公的年金だけで老後資金をまかなうことは困難になっていく。そんななかで、国の政策として、「NISA」や「iDeCo」等の老後資金を効率よく積み立てる制度を拡充することは、現実的かつ有効な選択肢といえる。

 

しかし、国がその選択肢をとる場合、同時に、投資に振り向ける余剰資金さえままならない人々をどのように救済すべきかという政策的課題が発生することになる。

 

とりわけ、就職氷河期世代はちょうど団塊ジュニア世代とも重なっており、自分の老後資金準備だけでなく、今後、後期高齢者にさしかかる親の「介護」の問題にも直面することになる。過大な経済的負担を負わせず、経済的に困窮させないためには、どうすればいいのか。国会・政府には、この世代が「置き去り」にされないようにするための有効な手当てが求められているといえる。

 

 

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