「元本保証」では不十分…インフレ+低金利が招く〈国民の窮乏化〉に抗い、財産を自衛するための“鉄則”【エコノミストが解説】

「元本保証」では不十分…インフレ+低金利が招く〈国民の窮乏化〉に抗い、財産を自衛するための“鉄則”【エコノミストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では、預貯金金利が物価上昇率を下回る状況が長引く見込みです。となると、価格変動リスクのある金融商品も活用してインフレ率に割り負けしないための運用を行う必要がありますが、その際には守るべき「鉄則」があるといいます。本稿では、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏による著書『インフレ課税と闘う!』(集英社)から一部を抜粋し、インフレ時代における「資産防衛」の方法について解説します。

インフレ率を上回る“高配当銘柄”は存在するが…

しかし、各種運用資産を見回しても、国内にはインフレに割り負けしない運用対象がほとんど見当たらないという問題がある。特に、円資産の確定利回りの金融商品には、インフレ率に割り負けないものはほとんどないと思う。

 

投資対象を価格変動リスクにあるものに広げるとどうだろうか。

 

まず、株式投資の配当利回りを調べると、プライム市場の単純平均利回りでは2.23%(2022年10月、東京証券取引所のデータ)である。物価上昇率をカバーするには僅かにレートが足らない。

 

個別銘柄では、高配当ランキング表の上位には6%以上のものもあるようだ。しかし、これらの銘柄を買ったとしても、将来にわたって、配当を多く支払ってくれる保証はない。

 

仮に、高配当銘柄を狙うのならば、複数の高配当銘柄に資金を分散させて、どれかの銘柄の配当が減ったときのリスクに備えることが有益である。

 

ほかには、格付けの低い事業債を調べて、社債利回りの高いものを選ぶという方法もある。ただし、格付けが低いということは、信用リスクも高くなる。表面金利の高さだけで投資対象を選ぶのは、あまり賛成できない。

 

少しマイナーな投資対象には、「サムライ債」というものがある。円建て外債のことを通称でサムライ債と呼ぶ。海外企業が日本で起債すると、超低金利の環境で資金を集められるから、わざわざ円建てで社債を発行してくる。

 

国内企業よりも、少し高い利回りを提示するところが魅力だが、海外企業の経営内容を調べることが難しいという難点がある。

しつこく調べ、納得できるものだけを投資対象にする

個人が資産運用で、リスクを取るときの鉄則を伝えておこう。

 

ブラックボックスに投資しないことだ。「中身のよくわからないものには投資を控えよ」ということだ。逆に言えば、必ず納得して投資すること。これは、運用の失敗にもあらかじめ覚悟を決めるための前提だ。

 

金融商品の中には、格好のよい名称や、親しみのある呼称のものが多い。一見、儲かりそうに錯覚させられるが、そこを敢えてしつこく調べる。

 

筆者は、以前より医師からもらった薬は必ず自分で種類や内容を調べることにしている。薬の副作用で後から苦しむのは自分自身だ。調べることを習慣づければ、あまり手数ではない。

 

風邪薬でも、「○○ 副作用」と入れて検索すれば、一発で様々な内容を知ることができる。専門家を頭から信じてはいけない。逆に、自分で調べることで、いつもお世話になっている医師は、やはり素晴らしい先生だと納得する。いい加減な処方をしていないことがわかって信頼度が高まるのだ。

 

けれども、医師にはプライドが高い人も多くいて、自分で調べた知識を患者が口にすると嫌な顔をする人も少なくない。だから、専門家の前で知識をひけらかさないことも鉄則だ。

 

投資信託も薬と同じで調べればかなりのことがわかる。調べればわかるのだから、必ずその中身を詳しく調べた方がよい。基本的に投資信託は情報開示されていて、運用対象が明らかになっている。運用対象を調べることで自分の知見も高まっていく。

 

改めて言うが、自分がわかるものだけを投資対象にすることをお勧めする。

 

インフレ課税と闘う!

インフレ課税と闘う!

熊野 英生

集英社

コロナ禍やウクライナ戦争を経て、世界経済の循環は滞り、エネルギー価格などが高騰した結果、世界中でインフレが日常化している。これからは、「物価は上昇するもの」というインフレ前提で、家計をやりくりし、財産も守ってい…

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