※画像はイメージです/PIXTA

映画『マルサの女』などで有名になった、国税局査察部(通称マルサ)。納税者に有無を言わさず強制調査に踏み込むマルサですが、強い公権力があるからこそ、「調査の空振り(脱税をみつけられなかった)」は許されません。では、マルサがここまで精度の高い調査を実現できるのはなぜなのでしょうか。“元マルサの税理士”上田二郎氏が解説します。

内偵班と実施班…目的が違うスペシャリストの両輪

分業制のひとつ目の理由は、スペシャリストの養成の必要性からだ。内偵班は銀行調査や張り込み、尾行、潜入調査などを担当しているが、内偵調査の技術は一朝一夕には育たない。特に張り込みや尾行は日ごろからの訓練をしていなければ、いざというときに簡単にできるものではない。

 

一方、実施班は強制調査の際に重要物証を探し出したり、脱税者の供述調書を取ったり、裁判のための証拠書類をまとめる技術が求められる。内偵班でも実施班でも査察官が一人前に育つには、少なくとも5年の修業が必要だ。

 

しかも査察部に配属されるのは、税務署での調査経験が5年以上のトップクラスの調査官だ。もし、内偵班に配属された査察官が5年経って一人前になったところで配置換えになると、実力を発揮するまでに10年、税務署の調査経験を加えれば15年の丁稚奉公が必要になる。このため内偵班、実施班の両立が難しく、両方を経験する査察官は少ない。

 

ふたつ目の理由は、強制調査は納税者に有無を言わさず踏み込む強力な公権力の行使のため、精度の高い調査が求められるということだ。強制調査に入ったものの、「脱税していなかった」では済まされない。

 

そのために内偵班が内偵調査を担当し、実施班が強制調査に入るシステムになっている。強制調査の可否を判断するのが情報検討会だ。時に検討会では内偵班が「脱税は間違いない」と主張し、実施班が内偵の弱い部分を追及して議論が鋭く対立する。

 

実施班は脱税者と対峙して強制調査の結論を出さなければならないため必死だ。内偵班、実施班が互いのプライドをかけて議論を戦わせることで、結果として事実無根の納税者に強制調査に入ることを防ぐ

 

 

上田 二郎

元国税査察官/税理士

 

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