老後破産を防ぐために…FPからの助言
さすがにこのままなにもせずに進んでいっては、破綻することが確実と危機感を感じた滝沢さん夫妻。以前会社の定年退職前に老後の資金について相談したFPのことを思い出し相談することにしました。
するとそのFPは話をひととおり聞くや否や「このままでは家計が破綻し滝沢さん夫妻はもちろん、お嬢さんやお孫さんまで路頭に迷ってしまうことになります」ときっぱりと伝えてきました。
滝沢さん夫妻もそれには同じ思いだったので、これからの対策についてアドバイスを求めました。FPからはさまざまな課題があるなかでも家計を改善するために支出の見直しを行っていくと同時に、長女のがん治療やひとり親世帯としての問題について、2つの相談窓口を利用することを勧められました。
以下でその2つの窓口を確認していきたいと思います。
1.がん関連はまず「がん相談支援センター」へ
まず長女のがん治療と副作用での体調不良に関する件については、受診している病院のなかのがん相談支援センターを早急に尋ねることを勧められました。
がん相談支援センターとは国立がん研究センターによると「がん相談支援センター」は、全国の「がん診療連携拠点病院」や「小児がん拠点病院」「地域がん診療病院」に設置されている、がんに関する相談窓口です。施設によって「医療相談室」「地域医療連携室」「患者サポートセンター」などの名称が併記されていることもあります。
この窓口は、だれでも無料で利用できる相談窓口です。がん相談支援センターでは、がんについて詳しい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどが、相談員として対応しています。がんの診断、治療や副作用、治療後の療養生活、お金や仕事、学校のこと、家族や医療者との関係、疑問や心配、不安など、どんなことでも相談できます。
滝沢さんたちの状況においては、長女の投薬治療による副作用やメンタル面、それから滝沢さん夫妻がネットで見つけて行っている民間療法などについて、相談することが可能です。長女がメンタル的に不安定になった原因のひとつである投薬治療による副作用に関しては、適切な緩和ケアを受けることで取り除くことができるかもしれませんし、場合によってはメンタル面のケアを勧めてくれるかもしれません。
そして滝沢さん夫妻がよかれと思って購入していた高額な水やサプリなどの民間療法については、その科学的根拠に関すること、正規のがん治療との兼ね合いでマイナスになる場合があること、なかには詐欺まがいのものも存在することなどの注意情報を得ることができます。
2.ひとり親家庭に関する悩みは「市町村などの窓口」へ
次に離婚をしてひとり親世帯となった滝沢さんの長女についてですが、やはり年金生活者の両親にすべてをずっと支援してもらって生活していくことには無理があります。すでに滝沢さん夫妻の毎月の家計収支は大幅な赤字になっていますし、貯蓄の額が半分以下になってしまっています。
そして年齢的なことを考えても、長女の面倒を一生見るということは現実的ではないですし、また滝沢さん夫妻に介護などのアクシデントが発生してしまったら、全員が路頭に迷ってしまうことになり兼ねません。
やはりがん治療との兼ね合いを考えながらも、長女の自立ということを考えていくことは大切です。そのため自立へ向けた第一歩として、ひとり親世帯に対する支援で利用できるものがあるかどうか確認することがあります。
令和3年の厚生労働省の調査によると、現在ひとり親世帯の数は全国で120万世帯以上ということです。ひとり親世帯における子供の貧困が問題視され、現在はさまざまな自立支援制度が存在します。
それらの多くは住んでいる市町村の役所に相談窓口が存在します。ひとり親家庭に向けた自立支援制度は「子育て・生活支援」「就業支援」「養育費確保支援」「経済的支援」の4本柱によって施策を推進されており、さまざまな分野に対する相談が可能です。
滝沢さんの長女世帯に関しても、利用できる制度を確認して自立へ向けた取り組みをしていくことが大切です。たとえば東京都に暮らす滝沢さんの長女の場合、東京都福祉局によると以下のような手当てが存在します。
■児童育成手当:子供一人につき、一律育成手当1万3,500円(月額)
一定の所得制限はあるものの、子供が高校を卒業するまでのあいだ、月々5万円以上の収入の支援を受けることが可能です。先述したとおり子育て支援や就業支援など、制度の種類は多岐にわたりますのでまずは一度自分の暮らす地域の役所の窓口で相談することが大切です。
家族だけで抱え込まず、まずは相談窓口へ
長女にはがん治療とひとり親という課題がありますが、だからといって盲目的にすべてを両親である滝沢さん夫妻が支援してしまうと、最終的には共倒れになるリスクもありますし、年齢的に滝沢さん夫妻が亡くなった後の長女と孫の人生も不安定な状態になってしまう可能性があります。
いま日本社会にはさまざまな問題がありますが、知らないところで支援制度ができていることもあります。ただし、便利な制度があっても、それを知らなければ使うことができません。まずはひとりで抱え込まずに情報を収集し、窓口で相談しながらひとつずつ課題をクリアしていくことが重要であると思います。
谷藤 淳一
株式会社ライフヴィジョン
代表取締役/CFP
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