★ダメな社長の話し方、6つのパターン
声に明暗をつけること、声の使い分けは、比較的改善しやすいお悩みです。声のトレーニングを実践してもらえれば、すぐに効果を実感していただけるはずです。
一方、厄介なのが自覚しにくいクセ。ダメな話し方のクセには、こんなものがあります。
【ダメな話し方のクセ】
①できない理由を羅列する、否定語が多い
②社員の過去の失敗をいつまでもネチネチ言う
③知識が豊富で、会社の商品をよどみなく説明できる
④社長が話す準備をしていない
⑤咳払い、「えー」を入れてから、喋り出す
⑥話を聴くときは、きちんと相づちを打っている
いずれも、そのままにしておくと社員のモチベーションを下げてしまいます。
実際のエピソードを交えて、③と④について解説していきましょう。
社長の頭がよすぎて、社員たちが置き去りに
③知識が豊富で、会社の商品をよどみなく説明できるが…
使う言葉は、仕事の専門用語ばかり。しかも、ものすごい早口。
本人のペースで話がどんどん進む。相手の理解度を考えない。
とある著名な社長に、インタビューしたときのことです。
年商1,000億円を超える大企業の社長ということで、当時まだ経験が浅かった私は、とても緊張していました。
しかし、いざインタビューがはじまると、会話はとてもはずみ、和やかな雰囲気のままインタビューを終えることができて、手応えは抜群です。
これはなにも、私のインタビューが上手だったからではありません。その社長が私のレベルに合わせて、話をしてくれたからです。私にもわかりやすい単語を選んで、ちょっとした質問にも噛み砕いて説明してくれたからこそ、「いいインタビューができた」と思えたのです。
では、伸びない会社の社長はどうでしょうか。
あるコンサル会社のH社長は、非常に頭の良い人で、新規事業を次々と立ち上げるアグレッシブな方でしたが、
「社員が育たないので、自分のやりたいことが実現できない」
という悩みを抱えていました。
あるとき、H社長とお話しする機会があったので、事業について聞いてみると、待ってましたとばかりにたくさんお話をしてくれました。
しかし、使う言葉は、仕事の専門用語ばかり。しかも、ものすごい早口です。H社長のペースで話がどんどん進んでいくので、質問する間もありません。
正直なところ、私はH社長の話の半分も理解できませんでした。
頭の良いH社長は、自分のレベルで話をするため、相手の理解度を考えません。社員たちは毎日のように、“わからない”が積み重なっていくので、きっと質問もしにくい環境でしょう。社員が育たないのも当然かもしれません。
難しい言葉を使っていないか、自分の言葉が相手にちゃんと伝わっているか。会話の際には必ず注意しておきたいポイントです。
懐かしい「昭和タイプのヘベレケ生活」がパフォーマンスに深刻影響
④ 社長が話す準備をしていない
「いやー、昨日も朝まで飲んじゃってさぁ」と、得意げ。
人と会うときも、ほとんどの確率で体調不良を起こしている。
一流のビジネスパーソンは早起きするというのは、広く知られていますが、朝型であることは、話し方にも影響すると私は考えます。
目覚ましい勢いで成果を上げている、あるスタートアップ企業のY社長は、超朝型。4時に起きて、ジムでトレーニング。出社後、仕事は午前中にすべて終わらせ、午後はミーティングや、人と会う時間に当てるというリズムで仕事をしています。朝からフルパワーで活動しているので、Y社長とのミーティングは、いつも新しいアイデアに溢れています。
会話もスピーディーに進んでいくので、その時間はとても満足度が高いものになります。
忙しいY社長ですが、ミーティング前になにを話すかの準備も必ずしてくれるので、会話が滞ったり、確認待ちで後回しになるということも、ほぼありません。
彼ら、一流社長は、最高のパフォーマンスが出せるように、話す準備も怠らないのです。
一方、夜中まで飲み会や接待は当たり前、翌日は二日酔いで出社し、午後にようやく仕事をはじめる、昭和タイプの生活をしている社長もいます。
私はある人材会社で、話し方のレッスンをしているのですが、社長のUさんはお酒が大好き。飲める人=仕事ができる人という、古き時代の価値観をお持ちの方で、午前3時4時まで飲むのは当たり前。
「いやー、昨日も朝まで飲んじゃってさぁ」と、得意げに話します。
もちろん、こんな生活をしていて、問題が起きないわけがありません。
朝まで飲んだ翌日は、遅刻ギリギリで出社。稼働できない時間に発生したトラブルが、解決しないまま積み重なっていくので、経営状態も悪化する一方です。
お会いするときも、ほとんどの確率で体調不良を起こしています。
「社長、大丈夫ですか? ミーティングの日をずらしましょうか」と提案しても、「いやいや、大丈夫なので、このまま続けましょう」と、どう見ても大丈夫じゃなさそうな顔で言います。
見ているこちらが心配になってしまいます。
そして必ず、
「私はいつも、ダメなんですよね〜」
「全然うまくいかないんですよ〜」
と、ネガティブな発言をします。
私が、
「社長、この間も同じこと言っていましたよ!」
と、思わずツッコミを入れてしまうほどです。
一流の社長たちは、「物価高騰が落ち着いたら、新しい企画を進めよう!」と社員に明るく呼びかけるのですが、U社長は、「このままじゃ、ダメだ」という自分の不安を社員にも共有させてしまうのです。
先日お会いしたときも「相変わらずダメなんですよ〜」と言っていたので、生活習慣を変えるだけで、ガラリと変わるはずですよとアドバイスしましたが、U社長の酒癖はまだ直っていないようです。
樋田 かおり
株式会社 トークナビ 代表取締役