(画像はイメージです/PIXTA)

話し方のプロとして経営者にノウハウをレクチャーしていると、なかには「これはぜひ改めていただきたい」と思うクセ強めの参加者もチラホラ…。よくある問題点と、その解決方法を提案します。※本連載は、株式会社トークナビ代表取締役、樋田かおり氏による著書『社長の伝え方には会社を変える力がある』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

★ダメな社長の話し方、6つのパターン

声に明暗をつけること、声の使い分けは、比較的改善しやすいお悩みです。声のトレーニングを実践してもらえれば、すぐに効果を実感していただけるはずです。

 

一方、厄介なのが自覚しにくいクセ。ダメな話し方のクセには、こんなものがあります。

 

【ダメな話し方のクセ】

 

できない理由を羅列する、否定語が多い

 

社員の過去の失敗をいつまでもネチネチ言う

 

知識が豊富で、会社の商品をよどみなく説明できる

 

社長が話す準備をしていない

 

咳払い、「えー」を入れてから、喋り出す

 

話を聴くときは、きちんと相づちを打っている

 

いずれも、そのままにしておくと社員のモチベーションを下げてしまいます。

 

実際のエピソードを交えて、まずは①と➁について解説していきましょう。

ダメなことばかり羅列する人と話しても、ちっとも面白くないので…

①できない理由を羅列する、否定語が多い

 

「営業しても、相手の理解が追いつかないんですよね」

 

「会社がうまくいっていないのは、社員に恵まれていないからです!」

 

仕事で失敗したとき、「今回はミスしてしまったが、この反省を踏まえて次は必ず成功させよう」と、ポジティブに捉える人と、「なんで失敗してしまったんだ。また次もダメかもしれない……」と、ネガティブに捉える人の2パターンがいます。

 

一流の社長がどちらかは、言わずともおわかりですよね。

 

一流の社長は、ひとつ失敗しても、そこからたくさんのポジティブな面を探し出して、次に繋げようとします。自分が社員だったとしたら、次に期待してくれる社長のために頑張りたいと思うはずです。

 

反対に、伸び悩む会社の社長は、否定的なことをいくつも探し出して、自分を卑下したり、周りのせいにします。

 

常に否定的な話し方で、ダメなことばかり羅列する人と話をしても、面白くはありません。

 

あるIT企業のA社長も、いつも否定的なことばかり言う社長でした。

 

A社長の会社が提供するウェブサービスは、ユニークでいかにもメディアが好きそうなものでした。

 

「会社のサービスを、もっと世の中に広めてほしい」と、女子アナ広報室に依頼が来たときも、これならすぐに取材のオファーが来るだろうと思ったほどです。

 

しかし、A社長とお話ししていくなかで、私はその会社にいままでメディアが取材に来なかった理由がなんとなくわかりました。

 

「いいサービスなのに、時代がまだついてきていないんです」

 

「営業しても、相手の理解が追いつかないんですよね」

 

「世の中のレベルが低すぎるんです」

 

自分ではなく周りがダメ。

 

みんなのレベルが低いからうちの会社は評価されない……と、ダメな理由をいくつも挙げ連ねます。

 

さらに、

 

「社員のやる気もなくて、困っています」

 

「何度教えても、できなくて」

 

「会社がうまくいっていないのは、社員に恵まれていないからです!」

 

A社長の考えでは、会社が伸び悩んでいる原因は、社員たちにあるということになっていました。

 

驚くべきことに、A社長は社員に対しても同じような話をするのです。

 

「会社の業績が上がらないのは、お前たちのせいだ」と毎日のように言われては、社員たちのモチベーションが上がるわけがありません。

 

ただ、エンジニアが開発したサービスは、たしかなものでした。

 

女子アナ広報室でPRをしたところ、すぐにあるテレビ局から取材をしたいとオファーが来たのです。

 

自分たちのつくったサービスが世に知れ渡る大チャンスということで、サービスの開発に関わった会社のエンジニアたちは、大喜びでした。

 

しかし、結論から言うと、このテレビ出演は失敗に終わります。

 

テレビに出たことで、ほかのメディアからも注目され、これから広報活動で忙しくなるというときに、A社長から出たのは、こんな言葉だったのです。

 

「テレビに出たわりに、あまり売り上げには繋がってないですよね」

 

「わざわざ時間をつくって出演したけど、忙しいだけでした」

 

「うちの会社は、メディアとは相性が良くないのかもしれません」

 

ネガティブな発言の連発で、せっかく上がった社員たちのモチベーションも一気に下がってしまいました。

 

本来であれば、出演した映像を使って営業先を回り、どんどんファンを獲得していくはずが、「メディアを利用しても、あまり効果がなかった」というA社長の発言によって、宣伝活動にブレーキがかかったのです。

 

テレビ出演という、瞬間最大風速を逃し、会社は広報のチャンスをみすみす逃すことになりました。女子アナ広報室としても、力及ばず、とても残念なケースでした。

 

否定的な言葉を羅列する話し方は、ときに、大きなチャンスを逃すのです。

誰だって「過去の失敗」を引き合いに出されるのはイヤ

➁社員の過去の失敗をいつまでもネチネチ言う

 

「あのとき、ああすればよかった……」

 

「また同じ失敗をしないでくれよ」

 

一流の社長は、未来思考です。

 

「5年後、こうなっていたい」

 

「会社をもっとよくするためにいま考えていることがあって……」

 

「社員の成長のために、こういうものを導入しようと計画しているんです」

 

常に夢や目標を持ち、会うたびに、それを楽しそうに語ってくれます。

 

なにかに挑戦している人、努力している人は、魅力的ですよね。そんな人が社長だったら、社員たちも同じように努力できる人に育ちます。

 

一方、伸びない会社の社長は、過去思考です。

 

「あのとき、ああすればよかった……」

 

「もっと、こんなふうにできたのに」

 

「あの失敗があったからダメになったんだ」

 

過去を振り返っては、後悔しています。

 

アプリ開発の会社のB社長は、まさに過去思考の社長でした。

 

B社長の会社は、20代の社員が多く、はつらつとした元気な会社に見えます。

 

B社長も40代前半とまだ若く、これから成長していこうという勢いのある会社でした。しかし、B社長は、「社員が全然意見を出してくれない」という悩みを抱えていました。

 

お話をしながら、どこに原因があるのか探っていくと、B社長の過去思考が見えてきました。

 

「あのとき、部下の〇〇君が、こんなミスをした。だから彼に仕事を任せるのがいまだに不安なんですよね」

 

「〇〇君は以前こんなトラブルを起こしたので、別の人に仕事をお願いしたいと思っているんです」

 

社員の失敗を不安視する気持ちは、わからなくはありません。どんなに優秀な人でも、仕事で失敗することはあります。

 

ところが、なんとか挽回して次に繋げようと社員が思っても、B社長がその可能性を取り上げてしまうのです。

 

また、B社長が冗談まじりにいう「また同じ失敗をしないでくれよ」という言葉も、社員たちを萎縮させていました。

 

誰だって、過去の失敗を引き合いに出されるのは嫌です。これでは、社員は成長するはずもありません。「社員が全然意見を出してくれない」原因をつくっているのは、ほかでもないB社長の伝え方だったのです。

 

先日B社長にお会いしましたが、そのときも、「社員が全然、意見をくれないんです!」と言っていたので、話し方のクセはまだ直ってはいないようです。

 

 

樋田 かおり
株式会社 トークナビ 代表取締役

※本連載は、株式会社トークナビ代表取締役、樋田かおり氏による著書『社長の伝え方には会社を変える力がある』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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