(EconomyNextより)

これまで、長年にわたり中国から「再建支援」という名目での多額の融資による債務返済に苦しみ、“債務のわな”に陥っているとして、インドや米国を筆頭に国際社会から多くの懸念の声が上がっていたスリランカ。スリランカ政府は、現在、デフォルト(債務不履行)に陥ったスリランカの対外債務再編を巡って、各国と債務再編案の合意に向けて話し合っている。肝心の中国は日本を含むパリクラブ(主要債権国会議)へ参加しておらず、2国間で協議を進める必要があるという。スリランカの政治・経済・金融に関する情報を中心に取り扱う、スリランカ発ローカルメディア『EconomyNext』より翻訳・編集してお伝えする。

中国は依然としてパリクラブに参加したがらない

「中所得国であるスリランカは、地政学的な理由もあり、複雑なプロセスを経て複数の貸し手と同時に交渉しなければなりません」とラニル・ウィクラマシンハ大統領はドイツのベルリンで開かれた意見交換会で語った。

 

「私たちにはパリクラブがありますが、最大の二国間融資国はパリクラブの外にいるインドと中国です」とウィクラマシンハ大統領は述べた。パリクラブに関して言うと、インドはパリクラブに参加することを決めたが、中国は依然として参加したがらない。

 

「このことは我々とは何の関係もなく、我が国は地政学的な対立に巻き込まれています」(ウィクラマシンハ大統領)

 

また、スリランカは民間の債権者とも協議をしなければならない。

 

「私たちはパリクラブと交渉しなければならない。それからインドとも交渉し、その後中国とも話し合わなければなりません。最後にはロンドンクラブに戻ってくる予定です」とウィクラマシンハ大統領は話した。

 

「これは、多くの国にとって困難なプロセスであり、ほとんどの国はそこに到達できないだろうし、大変な時間がかかることでしょう」

中国との関係は「一帯一路構想」に参加することを意味する

スリランカの対外債務360億米ドル(約5兆3,482億3,200万円)のうち約18%は中国に対するもので、そのほとんどが過去15年間に生じたものだ。

 

「中国とのこうした関係はBRI(一帯一路構想)に参加することを意味します。我々はこの関係の中でいくつかのプロジェクトを立ち上げました。良いものもあれば、そうでないものもあります。しかし、それは我々の責任です。BRIに参加することで、我々は何らかの問題や困難に直面する可能性があります」(ウィクラマシンハ大統領)

 

スリランカは、米国の住宅バブルを前に、中国と利回りを追求する国債保有者の両方から負債を積み上げ、さらにその後、FRBが流動性を供給して金利を引き下げた。中国からの約20億米ドル(約2,971億2,000万円)の資金調達もシンジケートローンによるもので、柔軟なインフレ目標から為替問題に陥ったためだ。

 

過去を振り返ると、ラテンアメリカの債務危機の最初の波は、1960年代後半から1970年代にかけてのアメリカの金融政策の悪政によって、各国が商業債務を積み上げた後の1980年代に起こった。

 

1980年に米国が金融引き締めを実施した際、連動して引き締めを行わなかったラテンアメリカ諸国は崩壊した。新たに開放された東欧諸国もそれに続いた。

 

 

※ロンドンクラブ:政府や中央銀行に資金を貸し付けている民間の商用金融機関が、債務国との返済交渉などに協力するために結成した非公式な債権者機関の会合

 

※シンジケートローン:借入人に対して複数の貸付人が、同じ契約で融資を実施すること

この記事は、THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)が提携するスリランカのメディア『EconomyNext』が2023年10月4日に掲載した記事「Sri Lanka debt negotiations complex with China going alone: President」を翻訳・編集したものです。

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