船舶市場もリスクコントロールは可能?
――オペレーティングリース事業の対象としては、航空機やコンテナなどもあります。そのなかで、船を選んだ理由とは?
階戸 確かに、はじめは航空機のほうに関心を持っていました。航空機マーケットは今後とも成長が見込まれますからね。一方、船舶については、今年8月には韓国の最大手・韓進海運が経営破たんしたことが大きなニュースにもなりましたが、一般的に船のマーケットはリスクが高いと思われており、新規参入を考える企業も少ないのです。しかしながら、航空機マーケットは非常に参入障壁が高くて……。
大手のリース会社の寡占市場と言っていいでしょう。また、条件競争が激しくなっており、投資家さんにとって良い条件を引き出すのはなかなか難しいこともわかりました。そのような中で、これまでほとんど接点のなかった海運業界の方々や、アドバイザーさんからのお話を聞いていると、リース料を支払ってくれる海運会社さんはもちろんのこと、船も種類によって、リスクは大きく異なるということがわかってきました。
また、船は種類によっては比較的小規模な金額でも参入が可能なマーケットであることもわかりました。よくよくリスクを見極めれば、船のマーケットでも、リスクを抑えた商品を組成できるのではないか、という考え方に変わってきました。また、新規参入者が少ないだけに、投資家さんにとって良い条件を引き出すこともできました。
倉本 海運業界は好調な場合、どんどん新たな船が建造されて、供給が過剰になりますから、海運市況というものは大きく上下しながら推移する傾向にあるようです。ただ、そのなかでも今回のファンドが保有するステンレスケミカルタンカーは市況の変動リスクが比較的小さいとされています。扱っている造船会社が限られているので、供給過剰に陥りにくいみたいですね。また、今回リース契約を結んだ海運会社は、イギリス系企業グループの傘下で、世界最大規模のケミカル船運航プールを運営する企業。倒産リスクは低いといえるのではないでしょうか。
階戸 ただ、今回のケミカルタンカーに行きつくまでには、少々時間がかかりました。こういったリスクコントロールのための判断基準を作りあげるまで、なかなか話が進まかった……結局、年度替わりで船舶ファンドの開発に向けて本格的に動き出そう、と決起集会を開いたときに、今回のケミカルタンカーをご紹介いただいたんですが、その船をターゲットにディスカッションをスタートしたのが4月のことでした。
きっかけとなった「ポスト太陽光」という視点
――そこから、5か月ほどで商品化に至ったわけですね。倉本さんは、短期間で作り上げることができた理由をどう見ていますか?
倉本 実は、階戸さんとは昨年後半から、「何か課税所得の繰り延べニーズに対応できる商品はないかな?」と話し合いを続けていたのです。というのも、ミナトマネジメントでは、昨年まで太陽光発電所の開発を行っていました。
ご存じのとおり、再生可能エネルギーには固定価格での買い取り制度が設けられています。売電による収益予測が立てやすいため、海外の投資家からも利回り商品として、日本の太陽光発電所が人気だったんですね。
その発電所の“出口”(売り先)の1つが、SBIマネープラザさんが手がける太陽光ファンドだったことをきっかけに、階戸さんとのお付き合いが始まり、多くの気づきを得ました。SBIマネープラザさんは、当初から太陽光ファンドを、安定的な利回りを提供しつつも、課税所得の繰り延べ効果も享受できる商品として、小口化し、投資家に売り出していたからです。
階戸 太陽光ファンドでは生産性向上設備投資促進税制を活用することで、投資家の皆さまに初年度に約90%を上回る償却メリットを享受いただくことができました。そのメリットに加えて、投資期間を短くできる可能性があるようなオプションを設定しました。第三者に購入選択権を付与することで、最短5年で投資期間が終わる可能性があるという商品設計にしたのです。
一般の太陽光ファンドは20年での投資回収を想定したものばかりでしたが、さすがに20年にわたり太陽光発電事業のリスクは負いたくないという投資家の皆さまの声が大きかったからです。当社の太陽光ファンドは、そんな実情とニーズのギャップを埋めることに注力した結果、昨年までの2年間で約130億円もの資金を集めることに成功したのです。
倉本 ただ、生産性向上設備投資促進税制は2016年度から縮小、この年度末をもって打ち切られることが決定しています。ですから、「新たな商品を」ということで話を続けていたわけです。当然、SBIマネープラザさんの太陽光ファンドの後継商品となるようなものでないと意味がない。やはり高い初年度損金率と、投資期間の短縮の可能性がポイントとなりました。
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