80代の父が30億円の遺産を残して死去。ひとり娘の依頼者が遺産相続手続きを進めていたところ、全額を後妻に相続する旨を記した遺言が見つかった……。このような場合、依頼者は遺言書に従って相続を受けることができないのでしょうか。本記事では、事例とともに、遺言書の効力と遺留分について、法律事務所Zの依田俊一弁護士が解説します。

遺留分を受け取る方法

遺言書の内容が、権利者である相続人の遺留分を侵害する内容であったとしても、遺言書自体が無効になる訳ではありません。

 

前述のとおり、被相続人本人の意思である遺言書が優先されます。では、久美子はどうすれば遺留分を受け取れるのでしょうか。

 

遺留分を侵害された相続人(久美子)が、遺留分を超える相続を受ける相続人(早紀)に対して、「遺留分侵害額請求」を行うことで、その差額の支払いを受けることができます。

 

その際、遺留分侵害額の請求権に時効がある点に注意が必要です。遺留分の請求権は、権利者が相続の開始および遺留分を侵害する相続があったことを知ってから1年で時効によって消滅してしまいます(民法1048条)。

 

遺留分侵害額の請求方法は、

 

1.相続人同士の話し合いによる「協議」

2.家庭裁判所の調停委員の仲介による「調停」

3.裁判所の法廷で争う「訴訟」

 

の3つの選択肢があります。いずれも弁護士に相談のうえで、方法を検討することをお勧めします。

 

また、遺言書自体が民法の要件を満たしていなかったり、捏造が疑われる場合、遺言書自体が無効になる場合もあります。

 

本記事でご紹介したケースでは、遺言書は民法の要件を満たしていましたので、弁護士立ち会いのもと、双方の協議によって久美子の遺留分が認められ、遺留分の全額である約7億5,000万円の支払いを早紀から受ける形で解決となりました。

 

 

依田 俊一

法律事務所Z

弁護士

 

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※依頼人の特定を避けるため、登場人物の設定を変更して一部脚色しています。

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