元公務員・認知症父の預金1,000万円を「姉が100万ずつ」亡くなる前後に引き出していた!弟は姉を「横領罪」で訴えることはできるか【専門弁護士が解説】

元公務員・認知症父の預金1,000万円を「姉が100万ずつ」亡くなる前後に引き出していた!弟は姉を「横領罪」で訴えることはできるか【専門弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

亡くなった親が生前「判断能力」を失っていた場合、「預金の使い込み」が発生しているケースも少なくありません。こうしたケースは罪に問えるのでしょうか。本記事では、リード法律事務所の代表を務める大山慧弁護士が、「相続人」による遺産の使い込みが発覚した際の適切な対応・事前に行うべき対策について解説します。

姉に使い込まれた遺産を取り返す<3つの方法>

Aさんが使い込まれた遺産を姉から取り返すには、どうすればいいのでしょうか?

①話し合い

まずは、話し合いにより解決する方法があります。使い込んだ相続人が非を認めれば難なく解決する場合もあります。

 

もっとも、使い込んだ相続人が事実を認めるとは限りません。引き出しそのものは認めても、Aさんの姉であれば「介護に必要だった」「世話をしたんだからいいじゃないか」といった反論も、想定されます。

②調停

遺産分割調停で解決できるケースもあります。調停とは、裁判所で調停委員を介してする話し合いです。

 

ただ、遺産分割の対象になるのは、死亡時に存在していた財産です。たとえば被相続人が亡くなる前に使い込みがなされていたのであれば、死亡時には預金が存在しておらず、本来遺産分割調停の対象になりません。次に紹介する訴訟での解決が一般的です。

 

亡くなったあとに使い込みがあったときには、遺産分割調停の対象にできます。近年の法改正により、「使い込みをした相続人以外の相続人」が全員同意すれば、使い込まれた預金も対象にできるようになりました。

③訴訟

話し合いがまとまらなければ、訴訟を提起するほかありません。

 

遺産の使い込みの場合には、「不当利得に基づく返還請求」あるいは「不法行為に基づく損害賠償請求」として訴訟を提起します。

 

いずれにせよ、訴訟の場合は特に証拠が重要視されます。預金の取引履歴や医療・介護記録などをもとに、疑われている相続人が引き出した事実や、被相続人が同意していない事実を示す必要があります。

 

訴訟を自力で行うのは難しいです。2017年の「地方裁判所の通常民事訴訟事件における弁護士の関与状況」は約84.3%です。Aさんのように弁護士に依頼するのが一般的と言えるでしょう。

姉を「横領罪」や「窃盗罪」で刑事告訴できるか?

Aさんは「姉の行為は犯罪にならないのか? 犯罪になるのなら刑事告訴したい」とも考えました。

 

姉に成立する可能性がある犯罪としては、「横領罪」と「窃盗罪」が挙げられます。父から預金の管理を任されていれば「横領罪」、任されておらず勝手に引き出したのであれば「窃盗罪」です。

 

もっとも、「横領罪」や「窃盗罪」は「配偶者、直系血族、同居の親族」の間では刑が免除され、処罰されません。Aさんの姉は父の子であり「直系血族」に該当するため、刑を科せないと考えられます。

 

ただし、「配偶者、直系血族、同居の親族」であっても、後見人になっている場合には業務上「横領罪」で処罰が可能です。

 

「配偶者、直系血族、同居の親族」のいずれにも該当しない親族が横領や窃盗をしたときには、処罰の対象です。この場合には「親告罪」という類型になります。

 

「親告罪」とは、被害者等による刑事告訴がないと起訴できない犯罪です。したがって、横領や窃盗で処罰を求めるのであれば刑事告訴が必要となります。

 

刑事告訴をするには、警察に告訴状を提出しなければなりません。

 

ところが「証拠が足りない」「民事不介入」といった理由で受理されないケースが多く一般の方からの刑事告訴については、まず受け付けてもらえないのが現状です。警察に受理されないときには、弁護士に相談するとよいでしょう。

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