「あれ?うちの子、前屈できない。子どもってみんな柔らかいんじゃないの?」実はそうとも限りません。今回は理学療法士として専門家への情報発信も行っているruiさんにインタビュー。体の柔軟性にまつわる素朴な疑問から、体を硬くしないための生活のポイント、おすすめのストレッチ方法などをお聞きしました。
あれっ、うちの子、体が硬い?理学療法士が「体を柔らかくする方法」を伝授 ※画像はイメージです/PIXTA

体の柔軟性にまつわる3つの誤解

①体は柔らかければ柔らかいほどいい?

体が柔らかい人ほど関節が動かせる範囲(可動域)は大きくなりますが、その柔らかさに合わせた筋力が備わっていないと関節に負担がかかります。たとえばバレエをやっている子は足首はとても柔らかいのですが、その分捻挫をしやすかったりもします。このような障害につながりやすいのが、体が柔らかすぎるデメリットになります。どのような動きをするのかによって、ベストな筋力と柔軟性のバランスがありますので、柔らかいほどいいとは一概には言えないと思います。

 

②柔らかい人ほど運動能力が高い?

柔軟性と運動能力の関係については、一部の研究で相関性が見られたものもあったようですが、「無関係ではない」という言い方にとどめておきたいと思います。一流の選手でも体が硬くて、前屈しても床につかない人もいるので、必ずしも体が柔らかい人ほど運動能力が高いとは言えませんし、すべての人に当てはまるものではなさそうです。

 

③運動前はとにかく全身を伸ばしておく方がいい?

怪我の予防として運動前のストレッチは必要ですが、おすすめは動きながらほぐすようなタイプのもの。ひたすら伸ばすだけの準備運動をすると、その後の筋力が落ちるという研究結果もあり、必要な時に力が入り切らない可能性もあります。運動前は動きながらほぐす「動的ストレッチ」を取り入れましょう。

 

胸周りと股関節に効くストレッチ6選

体の中でも特に硬くなりやすいのが肋骨を含めた胸周りと股関節になります。大切なポイントとしては、勉強やゲームなどでじっと座っていた後に行うこと。例えば1時間に一度はストレッチの時間を設けるというように、座っている時間の合間に取り入れてください。それぞれ10回×2、3セットを目安に行いましょう。

 

①背面ストレッチ

両手を組んで息を吐き出しながら、みぞおちを引っ込めて背中を丸めていきます。

 

②胸を開くストレッチ

両手を後ろ側で組み、腰を垂直に曲げながら組んだ手を上げていきます。

 

③肘膝のクロスタッチ

右手を挙げ左足を少し浮かします。

そのまま右肘と左膝をタッチ。逆側も同じようにタッチ。

 

④全身ひねり歩き

 

両手を頭の上で組み上半身を真横へ倒します。逆側へ足を踏み出し、体をひねりながら歩きます。左右交互に行ってください。

 

⑤四つん這いお尻回し

四つん這いになってお尻で円を描くようにゆっくりと回し、股関節をほぐします。

 

⑥四股ねじり

股関節を広げ四股のポーズを取ります。両手で膝を押しながら肩を入れるように左右に体をねじってください。

 

親子で楽しみながら生活の合間にストレッチを

体を硬くしないためには、動かない時間を長く作らないことがポイントです。お子さんが勉強やゲームで長く座っていたらちょっと体操をするように促してあげてください。ですがそれを習慣にするのはなかなか難しい事ですから、何か楽しめる方法を見つけてみることをおすすめします。例えば動画を見ながら体操をしたり、フィットネス系のゲームで遊びながらやるのも一つの方法です。ぜひお子さんだけではなく、親御さんも一緒に楽しんでやっていただけたらと思います。

 

人の体は年齢を重ねるごとに硬くなっていきますし、使わなければ使えなくなるもの。トイレが洋式になってしゃがめない子どもが増えてきたのがまさにいい例だと思います。

 

子どもの頃に柔らかかったからといって、大人になっても維持できるとは限りませんし、逆に大人になったらもう柔らかくならないというわけでもありません。コツコツとした積み重ねで体は変わりますし、ストレッチも含めてやっぱり継続は力なり、です。ぜひ続けてみてください。

 

【話を伺ったのは】

rui/理学療法士

理学療法士、forPT代表。神奈川県内の整形外科クリニックでの経験を活かして(現在は訪問看護ステーションに勤務)、SNSやオンラインで専門職に向けエビデンスに基づいた情報を発信。また理学療法士3名で共同運営しているHARE Fitでは、働く人に向けたオンライントレーニング講座や身体の使い方などをレクチャーしている。