マイホームを実現する人の平均年齢は40歳。しかし、念願叶って浮かれていると、30年後に恐ろしい事態に陥ることもあると、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏はいいます。本記事では、山口さん(仮名)の事例とともに計画的な住宅ローン返済計画の立て方について解説します。
やっと、マイホームを手に入れた…年収650万円の40歳・3児の父、喜びを噛みしめるも、70代で撃沈する「住宅ローン返済額」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

昇給で収入増!順調に思えた住宅ローン返済

住宅ローンを組んだ40歳時点では、山口さんの年収は650万円となっており、収入が増えていたので不安を感じることはありませんでした。

 

住宅ローンを組む際、安心して返済できる目安として返済率というものをみます。返済率は、年間の返済額が年収の何%にあたるかという割合です。

 

年間返済額÷年収=返済率

 

山口さんのケースの返済率をみると、年間の返済額が163万8,832円(月10万9,224円×12ヵ月+16万4,072円×2回)で、年収は650万円なので、

 

163万8,832円÷650万0,000円=0.252

 

という計算になり、25.2%となります。一般的に返済率は、20%~25%で収まることが望ましいとされているため、山口さんは25.2%と若干高めにはなっていますが、それほど多いとは言い切れないかもしれません。

3人の子どもの教育費が嵩み…

前述したとおり、山口さんには子どもが3人います。家を購入したときには、まだ子どもが小さかったこともあり、生活費がそれほど大きく増えることはありませんでした。

 

3人目の子どもが3歳になったのを機に、奥さんはパートに出て年間90万円の収入を得るようになり、世帯の収入からの返済率は25%を下回りました。そのころには1人目の子どもは10歳、2人目の子どもは7歳となり、2人は学習塾や習い事を始めていました。

 

子どもが成長するにつれてかかる生活費は増えましたが、山口さんの収入も増えていたので、多くはありませんが貯蓄ができていました。しかし、貯蓄は教育費に使うと考えていたため、夫婦の老後資金については、教育費の準備や生活費も相まってまったく準備できていない状態となっていました。

 

定期昇給がなくなった50歳、3人の子どもの大学費用ラッシュ

定期昇給は会社によって決まっていますが、山口さんの会社では50歳以降、定期昇給がなくなります。山口さんが50歳のときには、1人目の子どもが大学に進学する時期です。これまで準備していた教育費ですべて賄えたとは言えませんでしたが、入学費や授業料を支払うことはできました。

 

2人目の子どもが大学生になったときには、教育ローンを借りて教育費を賄うことになりました。そのころ、3人目の子どもは中学生になっていましたが、3人目の子どもの分の教育費の準備ができないのではないかという不安を感じ始めていました。

 

60歳になったときには、1人目と2人目の子どもは家を出て独立をし、3人目の子どもは大学生となっていました。2人の子どもを育て上げて教育費の負担は減ったものの、あと2年は子どもにお金がかかります。

 

山口さんの会社は60歳でいったん退職となり、その後、再雇用となる制度となっていたため、収入は退職前の6割程度となっていました。出た退職金は、一部を住宅ローンのボーナス払い分の繰り上げ返済にあて、残りを生活費の不足分に充てました。

 

2人の子どもが独立したので支出が減るかと思っていましたが、住宅ローンの支払いや教育費、2人目の子どもの進学時に借りた教育ローンの返済などにより、毎月の支払いは多くなっていました。

 

63歳のとき、3人目の子どもが大学を卒業し、やっと肩の荷が下りた山口さんは、もともと若いころから持っていた腰痛が悪化し、体の限界を感じ、退職せざるを得なくなります。とはいえ、住宅ローンや教育ローンは残っていたので、無理のない程度ですがアルバイトを始めます。

 

65歳から年金を受け取りはじめ、67歳からは、妻の分と合わせて22万円の年金額となったので、アルバイトを辞めました。しかし、住宅ローンの支払いの負担により生活はギリギリです。